→空気と電気だけで稼働するプラズマジェットエンジンが開発された
→電気によって発生したマイクロ波が空気にあたると空気がプラズマ化する

現在、航空機で主に使われているのは化石燃料を使ったエンジンです。

航空機のエンジンは圧縮された空気に燃料を吹きかけ、点火することで爆発的な膨張を引き起こし、後部に向けて噴出することで推進力にします。

ですが、論理的には何らかの手段で空気だけを大きく膨張させられれば、燃料は必要なくなります。

そこで研究者たちは、電気をマイクロ波に変換して空気に浴びせることで、プラズマ化させる方法を考案しました。プラズマ化した空気を一方に噴出させることで、推進力が生まれるといういわけです。

このプラズマジェットエンジンは、既存の化石燃料を使う航空機のエンジンと同等以上の推力を発することが分かっています。

今回の研究結果を応用することで、航空機は膨大な量の積載燃料から解放されるでしょう。化石燃料がとれない日本のような国にとっては有難い技術と言えます。

では、どのような仕組みでプラズマジェットエンジンは動くのでしょうか?

■プラズマジェットエンジンの仕組み

空気をプラズマ状態にするには温度を上げる方法と、電磁波を照射する方法があります。今回の実験では後者の方法をとりました。

電磁波照射では上の図のように、プラズマジェットエンジンは圧縮した空気にマイクロ波を照射することで空気をプラズマ化し、噴出させます。

上に載っている鋼玉はプラズマジェットの勢いを測定するための重しで、ジェットの出力が一定以上になると浮き上がって振動しはじめます。

研究者はこの鋼玉の振動を調べることで、プラズマジェットの出力を算出しました。

その結果、単位面積当たりの出力は最大で240k(N / m 2)にも及びました。

これは既存の大型ジェット航空機の出力と比べても遜色がない数値です(初期型のボーイング747のエンジンより強い)。

論文では装置を大規模化させることで、現実の航空機を動かすのに十分な総出力を得られるとしています。

■空気が燃料代わりになる時代がやってくる

今回の研究により、化石燃料を使わなくても、十分に空気を噴出する勢いが得られることがわかりました。

エンジンが実用化されれば、航空機は化石燃料を積む重みから解放される可能性もあるでしょう。

もっとも、燃料の代わりにバッテリーを積み込む必要はありますが、バッテリーの性能は急速に上昇しているので、希望はありそうです。

なにより、化石燃料の産出が少ない日本のような国にとっては実用化の恩恵は大きくなるでしょう。プラズマの膨張をピストン機構に組み込めば、車や工場も空気で動くようになるからです。

そうなれば、地球温暖化問題も解決に向かう可能性があるかもしれません。

研究内容は中国政府の支援を受け、武漢大学のDan Ye氏らによってまとめられ、5月5日に「AIP Advances」に掲載されました。

https://nazology.net/archives/59171