東京都は30日、過去最大規模の高潮が発生した場合、浸水が想定される区域図を公表した。東部を中心に、東京23区の3分の1にあたる約212平方キロメートルが浸水。堤防の決壊などで1週間以上、水が引かない地域も多いとした。都は想定をもとに住民の具体的な避難方法などの検討を進める。

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政府は米国やフィリピンなどで台風による大規模な高潮被害が発生した事例を受け、2015年に水防法を改正。最大規模の高潮を想定したハザードマップの作成や、スムーズな避難などの対策を自治体に求めた。

 都は同法に基づき浸水想定区域図の作成に着手。日本に上陸した過去最大規模の室戸台風(1934年)と同規模となる910ヘクトパスカルの台風が、東京に最も高潮被害を出すコースを通過したと想定した。

 このレベルの台風が東京湾近くを通過する確率は1千〜5千年に1回という。

 都は17区で住宅などが水につかる被害が出ると予測。地盤が低く、河川が近くを流れる墨田区、葛飾区、江戸川区は区域の9割が浸水する。丸の内や新橋、銀座の一部など、オフィス街や繁華街にも浸水域は広がり、浸水域内の昼間人口は約395万人に達するとしている。

 浸水の深さは最大で10メートル以上。墨田区や江東区などでは深さが平均7メートルになるという。

高潮による堤防の決壊や、排水施設が停止する可能性を踏まえ、浸水の継続時間も試算。50センチ以上の浸水の深さが1週間以上続く区域は都東部を中心に約84平方キロメートルに及ぶ。

 都は今回公表した区域図をもとに、19年度までに、住民の避難勧告の基準となる高潮の「特別警戒水位」の設定を進める。各区にも高潮時のハザードマップ作りを促していく。

 東京都は戦後、59年の伊勢湾台風と同規模の台風を想定し、防潮堤や水門などハード面の整備を進めてきた。都の担当者は「確率としては低いが、大型台風は今後起こる可能性はある。避難計画などソフト対策につなげていきたい」としている。
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