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■■■■■ アンパンマン総合スレッド ■■■■■
レス数が950を超えています。1000を超えると書き込みができなくなります。
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2018/08/19(日) 17:22:19.18ID:m58EUO5R
アンパンマン総合スレッド立てました。
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2018/08/20(月) 01:38:16.66ID:8f8dtdLU
中は高い所に電燈が一つともつてゐるだけだから、殆ど夜のやうな暗さである。
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2018/08/20(月) 01:38:26.93ID:K4r6F/a9
占いは当分見ないことにしましたよ」
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2018/08/20(月) 01:38:32.49ID:8f8dtdLU
まづ坑山の竪坑の底に立つてゐるやうな心もちだと思へば間違ひない。
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2018/08/20(月) 01:38:42.61ID:K4r6F/a9
婆さんは嘲るように、じろりと相手の顔を見ました。
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2018/08/20(月) 01:38:48.34ID:8f8dtdLU
僕はごろごろする石炭を踏んで、その高い所にある電燈を見上げた。
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2018/08/20(月) 01:38:58.34ID:K4r6F/a9
「この頃は折角見て上げても、御礼さえ碌にしない人が、多くなって来ましたからね」
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2018/08/20(月) 01:39:04.09ID:8f8dtdLU
ぼんやりした光の輪の中に、蟲のやうなものが紛々と黒く動いてゐる。
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2018/08/20(月) 01:39:14.04ID:K4r6F/a9
「そりゃ勿論御礼をするよ」
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2018/08/20(月) 01:39:19.99ID:8f8dtdLU
雪の降る日に空を見ると、雪が灰をまくやうに黒く見える――
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2018/08/20(月) 01:39:29.74ID:K4r6F/a9
亜米利加人は惜しげもなく、三百弗の小切手を一枚、婆さんの前へ投げてやりました。
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2018/08/20(月) 01:39:35.73ID:8f8dtdLU
あれのやうな具合である。
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2018/08/20(月) 01:39:45.47ID:K4r6F/a9
「差当りこれだけ取って置くさ。
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2018/08/20(月) 01:39:51.55ID:8f8dtdLU
僕はすぐに、それが宙に舞つてゐる石炭の粉だと云ふ事に氣がついた。
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2018/08/20(月) 01:40:01.20ID:K4r6F/a9
もしお婆さんの占いが当れば、その時は別に御礼をするから、――」
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2018/08/20(月) 01:40:07.37ID:8f8dtdLU
此中で働いてゐる機關兵の事を考へると殆ど僕と同じ肉體を持つてゐる人間だとは思はれない。
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2018/08/20(月) 01:40:16.92ID:K4r6F/a9
婆さんは三百弗の小切手を見ると、急に愛想がよくなりました。
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2018/08/20(月) 01:40:23.10ID:8f8dtdLU
現にその時も二三人、その暗い炭庫の中で、石炭をシヨヴルで下してゐる機關兵の姿が見えた。
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2018/08/20(月) 01:40:32.72ID:K4r6F/a9
「こんなに沢山頂いては、反って御気の毒ですね。――
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2018/08/20(月) 01:40:38.86ID:8f8dtdLU
彼等は皆默々として運命のやうに働いてゐる。
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2018/08/20(月) 01:40:48.39ID:K4r6F/a9
そうして一体又あなたは、何を占ってくれろとおっしゃるんです?」
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2018/08/20(月) 01:40:54.63ID:8f8dtdLU
外に海があつて、風が吹いて、日があたつてゐる事も知らない人間のやうに働いてゐる。
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2018/08/20(月) 01:41:04.11ID:K4r6F/a9
「私が見て貰いたいのは、――」
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2018/08/20(月) 01:41:10.37ID:8f8dtdLU
僕は妙に不安になつた。
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2018/08/20(月) 01:41:19.82ID:K4r6F/a9
亜米利加人は煙草を啣えたなり、狡猾そうな微笑を浮べました。
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2018/08/20(月) 01:41:26.25ID:8f8dtdLU
さうして、誰よりも先きに、元の入口をボイラアの前へ這ひ出した。
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2018/08/20(月) 01:41:35.63ID:K4r6F/a9
「一体日米戦争はいつあるかということなんだ。
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2018/08/20(月) 01:41:42.00ID:8f8dtdLU
が、ここでもやはり、すさまじい勞働が、鐵と石炭との火氣の中に、未練未釋なく續けられてゐる。
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2018/08/20(月) 01:41:51.38ID:K4r6F/a9
それさえちゃんとわかっていれば、我々商人は忽ちの内に、大金儲けが出来るからね」
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2018/08/20(月) 01:41:57.79ID:8f8dtdLU
海の上の生活は、陸の上の生活に變りなく苦しい。
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2018/08/20(月) 01:42:07.08ID:K4r6F/a9
「じゃ明日いらっしゃい。
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2018/08/20(月) 01:42:13.67ID:8f8dtdLU
エレヴエタアで艦の底から天上して中甲板の自分のケビンへ歸つて、カアキイ色の作業服を脱いだら、漸くもとの人間になつたやうな心もちがした。
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2018/08/20(月) 01:42:22.78ID:K4r6F/a9
それまでに占って置いて上げますから」
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2018/08/20(月) 01:42:29.56ID:8f8dtdLU
今日は朝から、ぐるぐる艦の中ばかり歩いてゐる。
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2018/08/20(月) 01:42:38.52ID:K4r6F/a9
じゃ間違いのないように、――」
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2018/08/20(月) 01:42:45.33ID:8f8dtdLU
砲塔、水雷室、無線電信室、機械室、汽罐室――
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2018/08/20(月) 01:42:54.34ID:K4r6F/a9
印度人の婆さんは、得意そうに胸を反らせました。
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2018/08/20(月) 01:43:01.09ID:8f8dtdLU
勘定するばかりでも、容易な事ではない。
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2018/08/20(月) 01:43:10.09ID:K4r6F/a9
「私の占いは五十年来、一度も外れたことはないのですよ。
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2018/08/20(月) 01:43:16.87ID:8f8dtdLU
それがどこへ行つても、空氣が息苦しい位生暖かくつて、いろんな機械が猛烈に動いてゐて、鐵の床や手すりが油でぴかぴか光つてゐて、僕のやうな勞働に縁の遠いものは、五分とそこにゐると、神經にこたへてしまふ。
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2018/08/20(月) 01:43:25.79ID:K4r6F/a9
何しろ私のはアグニの神が、御自身御告げをなさるのですからね」
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2018/08/20(月) 01:43:32.68ID:8f8dtdLU
が、その間に絶えず或る考へが僕の頭にこびりついてゐた。
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2018/08/20(月) 01:43:41.52ID:K4r6F/a9
亜米利加人が帰ってしまうと、婆さんは次の間の戸口へ行って、
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2018/08/20(月) 01:43:48.43ID:8f8dtdLU
それは歐洲の戰爭が始まつて以來、僕位の年齡のものが大抵考へるやうになつた、或る理想的な考へである。
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2018/08/20(月) 01:43:57.26ID:K4r6F/a9
その声に応じて出て来たのは、美しい支那人の女の子です。
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2018/08/20(月) 01:44:04.15ID:8f8dtdLU
今このケビンの寢臺の上にころがつて、くたびれた足をのばしながら、持つて來たオオベルマンの頁をはぐつてゐる間もやはりその考へは、僕をはなれない。
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2018/08/20(月) 01:44:13.02ID:K4r6F/a9
が、何か苦労でもあるのか、この女の子の下ぶくれの頬は、まるで蝋のような色をしていました。
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2018/08/20(月) 01:44:20.10ID:8f8dtdLU
これは其の後の事だが、夕飯をすませて、士官室の諸君と話してゐると、上甲板でわあと云ふ聲が聞こえた事がある。
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2018/08/20(月) 01:44:28.70ID:K4r6F/a9
「何を愚図々々しているんだえ?
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2018/08/20(月) 01:44:35.95ID:8f8dtdLU
何だらうと思つて、ハツチを上つて見ると、第四砲塔のうしろに艦中の水兵が黒山のやうに集まつてゐた。
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2018/08/20(月) 01:44:44.42ID:K4r6F/a9
ほんとうにお前位、ずうずうしい女はありゃしないよ。
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2018/08/20(月) 01:44:51.74ID:8f8dtdLU
さうしてそれが皆、大きな口をあいて、「勇敢なる水兵」
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2018/08/20(月) 01:45:00.19ID:K4r6F/a9
きっと又台所で居睡りか何かしていたんだろう?」
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2018/08/20(月) 01:45:07.55ID:8f8dtdLU
ケエプスタンの上に、甲板士官がのつてゐるのは、音頭をとつてゐるのであらう。
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2018/08/20(月) 01:45:15.89ID:K4r6F/a9
恵蓮はいくら叱られても、じっと俯向いたまま黙っていました。
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2018/08/20(月) 01:45:23.32ID:8f8dtdLU
こつちから見ると、その士官と艦尾の軍艦旗とが、千人あまりの水兵の頭の上に、曇りながら夕燒けのした空を切りぬいて、墨を塗つたやうに黒く見えた。
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2018/08/20(月) 01:45:31.61ID:K4r6F/a9
今夜は久しぶりにアグニの神へ、御伺いを立てるんだからね、そのつもりでいるんだよ」
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2018/08/20(月) 01:45:39.17ID:8f8dtdLU
下では皆が、鹽辛い聲をあげて、「煙も見えず雲もなく」
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2018/08/20(月) 01:45:47.32ID:K4r6F/a9
女の子はまっ黒な婆さんの顔へ、悲しそうな眼を挙げました。
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2018/08/20(月) 01:45:54.92ID:8f8dtdLU
僕はこの時も亦、その或る考へに襲はれた。
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2018/08/20(月) 01:46:03.09ID:K4r6F/a9
印度人の婆さんは、脅すように指を挙げました。
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2018/08/20(月) 01:46:10.89ID:8f8dtdLU
勇ましかる可き軍歌の聲が、僕には寧ろ、凄壯な調子を帶びて聞えたからである。
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2018/08/20(月) 01:46:18.83ID:K4r6F/a9
「又お前がこの間のように、私に世話ばかり焼かせると、今度こそお前の命はないよ。
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2018/08/20(月) 01:46:26.63ID:8f8dtdLU
僕はオオベルマンを抛り出して眼を閉つた。
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2018/08/20(月) 01:46:34.57ID:K4r6F/a9
お前なんぞは殺そうと思えば、雛っ仔の頸を絞めるより――」
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2018/08/20(月) 01:46:42.51ID:8f8dtdLU
艦は少し搖れ始めたらしい。
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2018/08/20(月) 01:46:50.31ID:K4r6F/a9
こう言いかけた婆さんは、急に顔をしかめました。
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2018/08/20(月) 01:46:58.28ID:8f8dtdLU
主計長の案内で吃水線下二十何呎の倉庫へはいつたり、軍醫長の案内で蒸し暑い戰時治療室を見たりしたら、大分足がくたびれた。
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2018/08/20(月) 01:47:06.02ID:K4r6F/a9
ふと相手に気がついて見ると、恵蓮はいつか窓際に行って、丁度明いていた硝子窓から、寂しい往来を眺めているのです。
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2018/08/20(月) 01:47:14.05ID:8f8dtdLU
そこで上甲板へ出て、水兵の柔道を見てゐると、機關長が氣合術をやつて見せるから來いと云つて人をよこした。
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2018/08/20(月) 01:47:21.71ID:K4r6F/a9
「何を見ているんだえ?」
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2018/08/20(月) 01:47:29.80ID:8f8dtdLU
その後で、士官次室へ招待されて皆で出かけたら、浴衣がけで、ソフアにゐた連中が皆立つて、僕たちの健康とSの結婚とを祝してくれた。
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2018/08/20(月) 01:47:37.55ID:K4r6F/a9
恵蓮は愈色を失って、もう一度婆さんの顔を見上げました。
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2018/08/20(月) 01:47:45.60ID:8f8dtdLU
このケビンにゐるのは、中少尉ばかりである。
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2018/08/20(月) 01:47:53.22ID:K4r6F/a9
「よし、よし、そう私を莫迦にするんなら、まだお前は痛い目に会い足りないんだろう」
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2018/08/20(月) 01:48:01.35ID:8f8dtdLU
だから、甚だ元氣が好い。
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2018/08/20(月) 01:48:09.12ID:K4r6F/a9
婆さんは眼を怒らせながら、そこにあった箒をふり上げました。
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2018/08/20(月) 01:48:17.16ID:8f8dtdLU
中でも、色の黒い、眼の大きい、鼻のつんと高い關西辯の先生の如きは、赤木桁平君を想起するやうな勢ひで、盛んにメートルをあげた。
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2018/08/20(月) 01:48:24.97ID:K4r6F/a9
誰か外へ来たと見えて、戸を叩く音が、突然荒々しく聞え始めました。
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2018/08/20(月) 01:48:32.91ID:8f8dtdLU
僕に自來也と云ふ渾名をつけたのも、この先生である。
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2018/08/20(月) 01:48:40.68ID:K4r6F/a9
その日のかれこれ同じ時刻に、この家の外を通りかかった、年の若い一人の日本人があります。
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2018/08/20(月) 01:48:48.78ID:8f8dtdLU
これは僕の髮の毛が百日鬘の樣だからださうだが、もし夫れ人相に至つては、夫子自身の方が遙かによく自來也の俤を備へてゐた。
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2018/08/20(月) 01:48:56.39ID:K4r6F/a9
それがどう思ったのか、二階の窓から顔を出した支那人の女の子を一目見ると、しばらくは呆気にとられたように、ぼんやり立ちすくんでしまいました。
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2018/08/20(月) 01:49:04.65ID:8f8dtdLU
これは決して、僕のひが眼ぢやない。
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2018/08/20(月) 01:49:12.06ID:K4r6F/a9
そこへ又通りかかったのは、年をとった支那人の人力車夫です。
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2018/08/20(月) 01:49:20.41ID:8f8dtdLU
鏡にさへ向へば、先生自身にもすぐにわかる事である。
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2018/08/20(月) 01:49:27.77ID:K4r6F/a9
あの二階に誰が住んでいるか、お前は知っていないかね?」
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2018/08/20(月) 01:49:36.27ID:8f8dtdLU
この先生は、僕にハムだのパインアツプルだの色んな物を呉れた。
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2018/08/20(月) 01:49:43.46ID:K4r6F/a9
日本人はその人力車夫へ、いきなりこう問いかけました。
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2018/08/20(月) 01:49:52.12ID:8f8dtdLU
さうしてその合ひ間には、「自來也はん」
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2018/08/20(月) 01:49:59.26ID:K4r6F/a9
支那人は楫棒を握ったまま、高い二階を見上げましたが、「あすこですか?
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2018/08/20(月) 01:50:07.97ID:8f8dtdLU
とか何とか云つて、僕のコツプへ無暗にビールを注いだ。
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2018/08/20(月) 01:50:15.06ID:K4r6F/a9
あすこには、何とかいう印度人の婆さんが住んでいます」
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2018/08/20(月) 01:50:23.75ID:8f8dtdLU
「今日靴下一つになつて、檣樓へ上つたのはあんたですか。」
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2018/08/20(月) 01:50:30.77ID:K4r6F/a9
と、気味悪そうに返事をすると、匆々行きそうにするのです。
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2018/08/20(月) 01:50:39.56ID:8f8dtdLU
彼と僕とは今朝雨の晴れ間を見て、前部艦橋からマストを攀のぼつて、檣樓へ上つて來たのである。
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2018/08/20(月) 01:50:46.48ID:K4r6F/a9
そうしてその婆さんは、何を商売にしているんだ?」
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2018/08/20(月) 01:50:55.35ID:8f8dtdLU
やつぱり自來也はんや。」――
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2018/08/20(月) 01:51:02.21ID:K4r6F/a9
が、この近所の噂じゃ、何でも魔法さえ使うそうです。
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2018/08/20(月) 01:51:11.40ID:8f8dtdLU
僕はこの先生とこんな話をしながら、ニコチンとアルコオルとをちやんぽんに使つた。
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2018/08/20(月) 01:51:18.16ID:K4r6F/a9
まあ、命が大事だったら、あの婆さんの所なぞへは行かない方が好いようですよ」
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2018/08/20(月) 01:51:27.20ID:8f8dtdLU
さうしたら、しくしく胃が痛くなり始めた。
レス数が950を超えています。1000を超えると書き込みができなくなります。

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