新潟空港に鉄道乗り入れを――。

 25年以上にわたり続いている議論を結論付けようと、新潟県で米山知事の主導の下、経済、交通、観光、自治体など各界のトップが初めて一堂に会し協議を始めた。上越新幹線延伸によって利便性の向上が期待される一方、採算性を疑問視する声は根強く、取りまとめは一筋縄ではいかなそうだ。

 上越新幹線の新潟空港への乗り入れは1991年に県が本格的に検討を始めた。それ以降、新幹線やJR白新線の延伸ルートをはじめ、現行の路線バスの改善、新潟駅南口のバス新設など新潟空港への交通手段の利便性向上に向けて議論が繰り返されてきた。

 いまだに結論が見いだせずにいる要因の一つは採算性だ。県が昨年6月に公表した事業費や採算性に関する調査結果によると、上越新幹線を延伸させると公的負担100%で建設費は最大422億円にのぼり、年間176万人の空港までの鉄道利用者がいなければ採算が取れないとしている。財源の確保や羽田・成田空港の需要取り込みなどが大きな課題だ。

 ただ、新潟空港の利用者数は近年伸び悩んでいる。2016年度の新潟空港の利用者数は約99万人と2年連続で目標の100万人を割った。国内で新潟空港のみの「オンリーワン路線」だったロシア・ハバロフスク線や中国・ハルビン線などが成田空港に就航したことや、外国人旅行客の需要を取り込めていないことが原因とみられる。

 5月30日に非公開で行われた知事と各界トップによる協議会の初会合。県によると、上越新幹線の乗り入れは「インパクトがある」など経済界から肯定的な意見があがった一方、財源や赤字の穴埋めなど採算性を疑問視する交通事業者らの声もあったという。米山知事も協議会後、報道陣に対し「交通手段の改善によって70万人超のギャップが埋められるものなのか。埋められない場合、継続した赤字を誰が持つのか」と慎重な姿勢を示した。

 協議会は今後、課題別に議論を重ねて今年11月頃に結論を取りまとめる予定。これを受けて県は方針案を示し、県議会12月定例会で諮る見通しだ。多くの利害関係者が集うなかでの議論に、知事は「一つの結論が出ないならば、論点が出尽くしたところで最後は政治的に決断することになるだろう」と述べた。四半世紀以上続く議論にどう着地点を見いだすのか。知事の判断が注目される。

2017年06月03日 12時57分 読売新聞
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