エンジンの慣性トルクについて考察するスレ
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以下のスレでエンジンの慣性トルクの話をしたらけっこう興味を持ってくれた人がいたので 単独スレを立ててみます 【2021】MotoGP総合520周目【サマーブレイク】 https://egg.5ch.net/test/read.cgi/bike/1625289220/305- いろいろ計算してますが自分は機械工学を学んだわけでもないド素人なので常に眉にツバを つけながら読んでください また計算式やグラフをたくさん用意しながらの投稿でけっこう疲れるので投稿はかなり スローペースになると思いますがご容赦ください ちなみにかつてのドゥカティSupermonoも往復式バランサーですがこれは90度V型2気筒の片バンク分を そのままバランサーとしたようなものですからこのような問題は生じません (ちょっと前にスズキの特許図で同様のバランサーを備えた単気筒エンジンが描かれており話題になりました) あ、忘れてました ハーレーが最近発表したパンアメリカ1250やスポーツスターSに搭載されているRevolution Max 1250という最新 水冷V型エンジンがあるのですが、これはバンク角は60度なのですがクランクピンが30度オフセットで点火間隔は 90度バンクのV型2気筒と同じであるとのことです https://young-machine.com/2021/03/15/175972/ ですから、もはや世界中のほとんどのバイクメーカーは大排気量2気筒エンジンにおいて90度V型や270度クランク 並列2気筒と同様の「2次の慣性トルクが打ち消される」レイアウトが良い、と判断しているのかもしれません (長い伝統のBMW水平対向エンジンや空冷アメリカンクルーザーは別として) 以上 >>83 慣性力の偶力どうこうなんてのは慣性トルクに一切関係無いんですが さて昨日の往復バランサーの話でちょっと訂正 BMW F800についてダミーピストンのクランクピンは当然本当のピストンのクランクピンの180度反対側 に位置していると思っていたのですが、図をよく見るとどうもオフセットされているようです Googleで画像を探してみたところこんな感じですね https://i.imgur.com/xqbAN1B.jpg https://i.imgur.com/WwWx0pQ.gif 図や写真からでは角度がよくわからないので、オフセット角45度と30度の場合の2パターンの慣性トルクを計算してみました (ダミーピストンのリンク機構は無視し単純な往復運動とし、ダミーピストン側の連桿比もλ=4とする) https://i.imgur.com/0rx1iOj.png グラフからわかるように昨日の「通常の360度クランクの倍の慣性トルクが生じる」という結論ほどひどくはないのですが どのみち360度クランクや180度クランクよりも大きな慣性トルクであることには変わりはなさそうです このようなクランクピン配置ではバランサーの目的である慣性力の打ち消しは完全ではなくなるわけですが、あえて このような設計とした理由は一生懸命考察してもあまり意味がなさそうなのでやめておきます (このエンジン形式で新規エンジンを開発するメーカーが今後現れることはないだろう、と思っているので) 先に四輪エンジンについて考えた時は「単気筒あたりの排気量は固定で気筒数を変える」という考えでいきましたが、 今度は「エンジンの総排気量は固定」としていくつかのエンジン型式を考えてみましょう (これはx軸を角度θとしたプロットで、時間tのプロットであれば回転数が異なる分スケールが変わることに注意) https://i.imgur.com/uCTozKU.png ここで慣性トルクの変動の割合は シングルプレーン直4:100% 270度クランク並列2気筒:34% 直列3気筒:38% クロスプレーン直4:3% ほどです 270度クランク並列2気筒から1気筒増えて3気筒になっても、2番目に大きな成分の3次成分が重ね合わせになるため 慣性トルクは逆に少し大きい程度になるわけですね 単気筒あたりの燃焼トルクは小さくなるわけですから、シグナル/ノイズ比という意味では悪化している、ともいえます もちろん3気筒は回転数上昇の分出力が稼げますし、燃焼トルクが支配的な低回転域では等間隔点火でスムーズに 回るという面があるのでどちらが良いとか悪いとかいった話ではありませんが まあそれでもシングルプレーン直4に比べれば3気筒の慣性トルクはかなり小さくなっていますから、Moto2エンジンが トライアンフの3気筒になったことはMotoGPへのステップアップということを考えると妥当な判断であったと思います ところでそのトライアンフは近年「T-Plane」クランクという変わり種の3気筒エンジンを開発しましたが、個人的にはこれに ついてはあまり理論的に作られたものはない、思いつき程度のものだと思っています https://young-machine.com/2020/02/19/75327/ https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2020/02/triumph-tiger800-tiger900-crank-768x512.jpg https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2020/02/triumph-tiger900-T-plane_003-768x266.jpg 謳い文句の不等間隔点火うんぬんという話は古澤氏が懐疑的であるとしてきたことですし、なによりこの形式では1次の 慣性力がバランスしない、つまり振動が大きいはずです 実際、海外でのトライアンフTiger900のレビューでは振動を気に入らない、これならTiger800のほうが良かったとしている ものがかなりあります (まあそんなに気にならないよ、としている人もけっこういますが) また排気集合が等間隔とならないことも考えると、この形式のクランクがMoto2に導入される可能性は低いであろう、 というのが私個人の感想です (T-PlaneについてはMotoGPの4気筒の話が終わってからまたグラフ等を示します) (今日はここまでで次からはようやくMotoGPの4気筒ですが、概ね元のMotoGPスレで語ったことそのままになります) さてMotoGPの初期、990cc時代の主なエンジンの慣性トルクを比較していきますが、まず元のMotoGPスレの以下 の投稿で描いたRC211VのV型5気筒のグラフが正しく描けていませんでした https://egg.5ch.net/test/read.cgi/bike/1625289220/422 (gnuplotのコマンドでミスをしてたのです、ごめんなさい) で、描き直してみたのがこちらです https://i.imgur.com/3FSZPKY.png これが正しいかどうか、ホンダV型5気筒の気筒配置の考案者である山下ノボル氏が書かれた資料と比較してみましょう レースバイクの速さ「エンジン爆発間隔の不思議」山下ノボル https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmemag/109/1054/109_KJ00004374770/_article/-char/ja/ https://i.imgur.com/GejJApE.jpg 山下氏の図5は慣性トルクと燃焼圧トルクの両方を足し合わせたものですが、400度〜540度の区間にある1つの山 と1つの谷は燃焼圧トルクの影響を受けていなさそうですからここで比較することにします 私の描いたグラフでこの山と谷の部分の角度とy軸の値を計算すると、 山:角度 445.8度、y軸の値 0.94 谷:角度 526.8度、y軸の値 -0.79 山下氏のグラフでのシングルプレーン直4のグラフの最大値1000から換算すると 山:y軸の値 0.94*(1000/2)=470 谷:y軸の値 -0.79*(1000/2)=-395 となり山下氏のグラフと概ね一致していますから、たぶん正しく描けているのでしょう ちょっと煩雑で見にくくなりますが、スズキの75度バンク360度クランクV4とヤマハのクロスプレーン直4まで重ねて 描くとこのようになります https://i.imgur.com/pvcZKPK.png 結論としては「ホンダのV型5気筒やスズキの狭角V型4気筒の慣性トルクはそこそこ大きかった」となります gnuplot用のサンプルは以下の通りです (もうミスが無いとよいのですが) set xrange[0:720] set xtics 45 set yrange[-2:2] set mytics 2 set grid set key opaque box set samples 500 set angle degrees set dummy theta v1(theta)=sin(theta)+sin(2*theta)/(2.*lambda*(1-sin(theta)**2/lambda**2)**(1/2.)) a1(theta)=cos(theta)+cos(2*theta)/(lambda*(1-sin(theta)**2/lambda**2)**(1/2.))+sin(2*theta)**2/(4.*lambda**3*(1-sin(theta)**2/lambda**2)**(3/2.)) t1(theta)=-v1(theta)*a1(theta) lambda=4 plot t1(theta)+t1(theta-180)+t1(theta-180-180)+t1(theta-180-180-180) title "KAWASAKI singleplane inline 4" replot t1(theta)+t1(theta-90)+t1(theta-90-270)+t1(theta-90-270-90) title "DUKATI 360 deg crank V4" replot (4/5.)*(t1(theta)+t1(theta-104.5)+t1(theta-104.5-180)+t1(theta-104.5-180-77.5)+t1(theta-104.5-180-77.5-284.5)) title "HONDA RC211V V5" replot t1(theta)+t1(theta-285)+t1(theta-285-75)+t1(theta-285-75-285) title "SUZUKI 75 deg bank 360 deg crank V4" replot t1(theta)+t1(theta-270)+t1(theta-270-180)+t1(theta-270-180-90) title "YAMAHA crossplane inline 4" # (dummy comment) 元のMotoGP用のミスしたグラフはしばらくしたら消しておきます (今日はここまで) >>76 >MotoGPのエンジン仕様も90度バンク非スクリーマーV4かクロスプレーン直4かに収束 これは今のMotoGPがレギュレーションで4気筒以下に縛られているから・・・ せめて5気筒が認められれば・・・ >最低車重145kgに近ければもっとクロスプレーンの優位性が出てくるのかも 回転数ではなくて車重? 高回転になるほど180度クランクのネガが顕著になるのでMotoGPほど高回転を多用しないSBKではまだスクリーマーが通用しているのではと思うのだけど、車重が軽いほどクロスプレーンの優位性が出るとされた理由を教えてくだされ。 車体が重い方が反応がダルで挙動が出にくくなるというのはあると思うけど。 >>91 > 回転数ではなくて車重? まあこれは私個人の考え方なんですが、現在のMotoGPと現在のSBKで比較するとエンジンの諸元も車重も 違うので2つの要素が違うことになってしまい、比較が難しくなる それが例えば以下の記事だとアクラポヴィッチ製のエクゾースト付きのパニガーレV4Rで234PS/15500rpm ですからこれなら990cc最後のシーズンのスズキGSV-R(236PS/16400rpm)とだいたい同じですから、 まだこの990cc時代と比較したほうが良いかな、と https://young-machine.com/2018/11/05/16510/ 理系的な考え方だとパラメーター2つ変わる条件での比較より、1つパラメーターを減らしての比較ができるなら そちらのほうがよいかな、と あと違うジャンルや年代のエンジンだと回転数が上がったからといって単純に慣性トルクがその2乗に比例するわけじゃ ないですよ (バルブ系の制約がないとして)エンジンの回転数の上昇にわかりやすく貢献するのは往復質量の軽量化、つまりピストン とコンロッドの軽量化ですから、現在のMotoGPのエンジンは慣性トルクの係数であるm・r^2・ω^2のうちmがそもそも 他のジャンルや過去のエンジンよりも小さいのです このへんは実際に慣性トルクの式をいじってあれこれ計算してみないと理解しづらいかもしれません > 車重が軽いほどクロスプレーンの優位性が出るとされた理由を教えてくだされ。 トルクが最終的に駆動するのは車体ですから私にとってはそれが当然なんですが F=maのFの元がトルクになっただけで物理の基本でしょ? さて、昨日は990cc時代のエンジンについてグラフを描きましたが、もう少し最近のMotoGPエンジンについて考えてみましょう 慣性トルクのグラフですが、ここから先はV型エンジンは全てバンク角90度という前提で進めます (アプリリアも狭角V型やめちゃったし) https://i.imgur.com/s4t7b31.png この先かなり冗長な説明になり「そんなもんいまさら説明されんでも知っとるわ!」と言いたい方も 多いかと思いますがそこはテキトーに読み飛ばしてください どこから手をつけて良いかわからないくらい考察すべき点があるのですが、まず議論の前提として 排気集合について ・2気筒単位で2-1集合とした場合、点火間隔が360度-360度(360度±0度)に近い →排気干渉を避け、集合部で生じる反射波による掃気効果で最高出力が高められる ・2気筒単位で2-1集合とした場合、点火間隔が180度-540度(360度±180度)に近い →排気干渉のため最高出力が低下する と勝手に決めつけます まず360度クランクV4から考えてみましょう 360度クランクはV型2気筒をそのまま横に2つ並べたものですから、慣性トルクは単純に>>77 のバンク角90度 V型2気筒の慣性トルクの2倍になります 点火角度まで同じV型2気筒を並べると左右同時点火(900cc時代のドゥカティは実際そう)になってしまうので、 片側のV型2気筒の点火角度を360度ずらすことで前バンク・後バンクそれぞれ360度間隔の等間隔点火と なります (4ストロークエンジンというのは任意の気筒の点火角度を360度ずらせるエンジンなのです) 片バンクあたり等間隔点火なので音の周波数が単気筒の倍、といった単純なものではないにしろ排気干渉が生じない ことから排気音が高くなるので、V4エンジンでスクリーマーというのはこの360度クランクのことを指します ちなみに直4エンジンのスクリーマー(シングルプレーンクランク、180度等間隔点火)のようにエンジン全体 で等間隔点火であると勘違いしている方をよく見かけますが、例えば片側のV型2気筒だけ見た場合270度-450度 または90度-630度の間隔でしか点火できませんから180度の整数倍でない間隔を含むことになり、エンジン全体で 180度等間隔点火とならないことがわかります この90度バンクV型4気筒の360度クランクはRC30やRC45といったホンダのレース向けV4で長らく使われてきた 形式で、MotoGPでは2012〜2016シーズンのRC213Vがこれです また、ドゥカティは800cc時代の2007〜2009シーズンがスクリーマーであったとされています RC30の排気管を示すとこんな感じで、前バンク2-1、後バンク2-1で集合し、さらにそれを1つにまとめています https://i.imgur.com/KXR3QPz.jpg RC45時代の最後の頃のレース用排気管は4-2-1集合でなく前バンク2-1、後バンク2-1でその後集合せずマフラー 2本出しだったみたいですが、私は当時レースにあまり興味がなかったのでよくわかりません (まあMotoGPも2015シーズンからしか見ていないのでそれ以前のことはあまりよくわかってませんが) 現在のMotoGPは皆さんもご存知のように前バンク2-1、後バンク2-1集合でそのまま2本出し排気管です ちなみに先に述べた990cc時代のドゥカティの同時点火(ビッグバン)エンジンですが、同時点火では集合効果が 使えませんからそのまま4本の独立排気管になっています(なんかもったいないですね) 次に180度クランクV型4気筒です 伝統的にホンダのレース向けではない市販車(VFR750F、VFR800等)に用いられてきた形式ですね バンク角90度のV型2気筒というのはそれ自体1次の慣性力の釣り合いが取れていてバランサーなしで成立 していますから、横に2つ並べてV4にする場合何度の組み合わせでもかまいません 慣性トルクについて考えると、バンク角90度V型2気筒では2次成分が消えても3次、1次、4次の成分が残って いたのが、180度クランクV4では https://i.imgur.com/C79inMr.jpg と3次、1次の成分が消え4次成分が残ることになり、結果クロスプレーン直列4気筒と全く同じ慣性トルクと なります 実際簡単な図を描いて見ると、どちらのエンジンもクランク90度回転毎にどれかの気筒が上死点になるという 点で全く同じであるとがすぐにわかります (面倒くさいのでここでは省略) さて、ヤマハのクロスプレーン直4がレースで実績を残しているんだからそれと同じ慣性トルクの180度クランク V型4気筒をレースに使ってもよさそうなものですが、排気集合の問題があります まず現在のMotoGPのように片バンク2-1集合とした場合180度クランクでは点火間隔は180度-540度(360度±180度) ですから、排気集合的には最も不利な形であり最高出力の低下が避けられません では他に良い集合方法がないかというと、例えばホンダの市販車180度クランクV4ではこんな感じの排気集合です https://www.boonstraparts.com/en/part/honda-vfr-750-f-1994-1997-vfr750f-rc36-exhaust-header-downpipes-1996/000001059101 https://i.imgur.com/kbQZatI.jpg https://i.imgur.com/GzWvRF4.jpg こうやって前後のバンク毎ではなく前と後の気筒で2-1集合とすればそれぞれの集合では270度-450度(360度±90度) の集合になり180度-540度(360度±180度)の場合よりもマシになります しかし、このような非常に複雑な排気集合ではスペースを取りますし、排気集合までの長さや合流角度など設計上の制約が 多くなるでしょう このあたりBikers Station誌 2018年10月号「ホンダが目指した2輪車に最適なV型4気筒」でホンダOBの小澤源男氏は 以下のように説明しています "小澤:(略)180度クランクのV4を作ってみたら、360度より滑らかに回ることに気づかされた(略)" "小澤:(略)180度のほうがスムーズに回って高回転域の伸びも少し良かった" "B/S編集部:(略)ならばなぜ、全部のV4を180度クランクにしなかったんですか" "小澤:それは排気系をどう配置するかと関係あるんだ。360度クランクの場合は、前2気筒のエキパイを集合させて、 それをさらに1本にまとめるやり方ができるのに対して、180度クランクだと、前後の1気筒ずつを集合させたほうが いいことがある。でも、これをするにはスペースを含めて大変なことが多い" ※ここで小澤氏は180度クランクのほうがスムーズな理由として1960年代のCB72やCB77(並列2気筒で360度クランクと 180度クランクの両方がラインナップされていた)を引き合いに出していますが、これらはどちらもバランサー無し のエンジンで1次振動の関係で180度クランクのほうがスムーズだったわけですから、最初から1次振動が問題と ならない90度V型エンジンに関する説明になっていないかと思います ※一応180度クランクV型のほうがメインジャーナルの荷重は低そう、という程度の違いはあるかもしれませんが 計算はしていません まあ以上のようなことを総合すると、2017シーズン以降非スクリーマーに変更されたホンダRC213Vのクランク角は 180度ではないだろう、というのが私の考えです ここでついでにクロスプレーン直4勢の排気集合についても確認しておきましょう 現在のヤマハMotoGP機YZR-M1の排気集合は写真からは少し確認しづらいのですが、ありがたいことに デアゴスティーニから週刊 YAMAHA YZR-M1なるものが出ており、その組立の様子をYouTubeにアップ してくださっている方がたくさんいます https://www.youtube.com/watch?v=PXIoPjMAyLo& ;t=305s https://i.imgur.com/OksCEZW.jpg このように1番気筒と2番気筒で2-1集合、3番気筒と4番気筒で2-1集合でそれらをさらに集合しています ※ちなみにバイクのエンジンの気筒番号は通常車体左側から1番,2番と数えます ヤマハの(たぶんYZF-R1の)クロスプレーン直4の点火間隔は1番-3番-2番-4番で270度-180度-90度-180度と されていますから、図にまとめるとたぶんこんな感じで、集合される2気筒のペアの点火間隔は 270度-450度(360度±90度)となります https://i.imgur.com/8JneTGr.png (YZR-M1ではクランク回転方法が逆なので気筒番号とか違うかもしれませんが基本は同じです) (以前R1とM1の両方ちゃんと調べたはずなんですがメモとか探すのめんどくさいので…) スズキGSX-RRはクランクピンの配置を公表していませんが、排気集合は明らかにヤマハと同様の 1番気筒と2番気筒、3番気筒と4番気筒の集合ですから普通に考えればクランクピン配置もヤマハと 同じでしょう https://young-machine.com/2020/03/01/78655/ https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2020/02/suzuki-gsxrr-motogp-18.jpg 次はドゥカティの70度クランクV4の話です ドゥカティのMotoGP機についてはこれまで特にクランク角は明言されていませんが、市販車で2006年発表のデスモセディチRR と2017年発表のパニガーレV4が70度クランクを採用しています さてドゥカティが公表しているパニガーレV4の点火間隔は以下の通りです (一般的な気筒間の角度表記ではなく、1番気筒を起点としての回転角表記) https://i.imgur.com/d7IL1FO.jpg 見ての通り4ストロークの720度の1サイクルのうち380度で4つの気筒の点火が終わるという変わった点火パターンで、一般には 古くからのビッグバン理論に基づいてタイヤのスリップ・回復によるトラクション云々といった説明がされていますが、果たして それが本当の狙いなのか?というのがこのスレでのお題です まずこのエンジンの集合は前バンク2-1、後バンク2-1ですが、前バンクの点火間隔は290度-430度(360度±70度)、後バンクも 380-90=290ですから前バンクと同じ290度-430度(360度±70度)の点火間隔です よって排気干渉が最も大きい180度-540度(360度±180度)からは十分遠いと言えるでしょう 一応点火パターン図も描いてみました https://i.imgur.com/gnXmc8Q.png (今日はここまでです) 等爆、不等爆って言ったほういいんじゃね? スクリーマー、ビッグバンって2ストNSR時代には言われていたが 4ストではあまり聞いたことない ちなみに不等爆は回転上昇時のトラクションに優位性があるとされてるが クロスプレーンはこれを狙ってるモノじゃないからね 滑らか回転実現が目的で、不等爆は結果的にそうなっただけ >>99 後半はそれを言うためにスレ主がこのスレ立てたんやで >>98 の点火パターン図には吸気バルブ(水色)と排気バルブ(赤色)の開区間も示しています (テキトーなレーシングエンジンから引っ張ってきたものなのでMotoGPエンジンとして妥当かどうかはわかりません) 集合したペアの気筒でそれぞれ排気バルブの開区間が重なっていないことを確認してみてください (私がなにか勘違いしていて作図が致命的に間違っているかもしれないので注意してください) さてデスモセディチRRとパニガーレV4が70度クランクなのは確かとして、ドゥカティのMotoGP機についても クランク角を推測してみましょう 2019年頃ドゥカティは「Ducati Memorabilia」という企画で過去のMotoGPエンジンのパーツを一般に販売 しました https://www.ducati.com/jp/ja/home/memorabilia クランクシャフトの写真もあるのですが、これではオフセット角が何度なのかはっきりしません https://i.imgur.com/Nlngjwh.jpg (ちなみにこれはGP14かGP15あたりのクランクシャフトと思われます) そこでカムシャフトの画像にCADで線を引き、角度を計ってみました https://i.imgur.com/uQ9Zto2.jpg 図の角度が37.4度ということはカムシャフト作動の位相差は180-37.4=142.6度、カムシャフトはクランクシャフトの 1/2の速度で回転していますからクランクシャフトでの角度に直すと142.6×2=285.2度相当となります。 つまり点火間隔は285.2度-434.8度(360度±74.8度)で、クランクピンのオフセットは74.8度ということになります (まあ最初から37.4度を単に2倍すればよかったのですけど) 私が引いた線の誤差とカメラのレンズ収差による誤差もありそうなので結局のところドカティのMotoGP機の クランク角は70度とみて問題なさそうです >>99 > 等爆、不等爆って言ったほういいんじゃね? 二輪業界の人はよく「爆」という言葉を使いたがるんですが、燃焼の専門家によると 日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 29 No. 1 2012 「微小重力実験による燃焼の限界に関する研究」丸田 他 http://www.jasma.info/journal/archives/report/%e5%be%ae%e5%b0%8f%e9%87%8d%e5%8a%9b%e5%ae%9f%e9%a8%93%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%e7%87%83%e7%84%bc%e3%81%ae%e9%99%90%e7%95%8c%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e7%a0%94%e7%a9%b6 "閉空間における燃焼(火炎伝播)に伴って,圧力の上昇(や場合によっては衝撃波の発生)による建造物の破壊や 大きな音を伴った場合を「爆発」と総称する. 一方,着火して火炎が生じこれが伝播性を有する火炎となる燃焼現象は,あくまでも「燃焼」であってこれを爆発と呼ぶ のは誤りである. 例えば自動車に使用されているガソリンエンジンのシリンダ内で起きている現象は火炎の伝播,すなわち燃焼であり, これに伴う温度・圧力の上昇を利用してはいるものの,これを爆発というのもやはり誤りである." としておりエンジンの燃焼についいて「爆発」というのは不適切です 四輪業界ではこの知識はかなり前から浸透していてモーターファン・イラストレーテッド誌のような自動車機械 オタク向け雑誌では必ず「燃焼」であり「爆発」という言葉を使うことはまずありません (たまに変なゲストライターとかが書く場合を除き) 二輪業界では古澤氏や山下ノボル氏のような偉いエンジニアまで爆発という言葉を使いますが、まあ慣習というか ジャーナリストやファンがその表現を使い続けてるのでなんとなく合わせてる程度のものでしょう 私は四輪エンジンのことを調べていた時期のほうが長いのでこのスレでは「等爆」などといった言葉を使うことは ありません(燃焼のきっかけとなる点火で考えて「等間隔点火」「不等間隔点火」です) まあ二輪だと2ストエンジンがあるのでなんとなく排気音から爆発してるようなイメージがあったのかもしれませんし、 そこに「ビッグバン」なんてさらに爆発のイメージの言葉が来てしまって「爆」の字を使ってしまったのはなんとなく わからないでもないです > スクリーマー、ビッグバンって2ストNSR時代には言われていたが 海外のジャーナリストは今でも頻繁に使いますよ (私は日本語記事よりも英語記事を読むほうが多いのです) ただ古澤氏やホンダの人の定義によると「ビッグバン」は複数気筒の同時点火を指すので、現在のエンジンは全て古澤氏 の言うところの「ロングバン」です シリンダー内での燃焼の良い動画があったので貼っておきます How Engines Work - (See Through Engine in Slow Motion) https://www.youtube.com/watch?v=xflY5uS-nnw& ;t=334s さてドゥカティの70度クランクV型4気筒を含んだグラフを再掲します https://i.imgur.com/s4t7b31.png gnuplotではこんな感じ set angles degrees set samples 500 set xrange[0:720] set grid set xtics 45 set dummy theta a1(theta)=cos(theta)+cos(2*theta)/(lambda*(1-sin(theta)**2/lambda**2)**(1/2.))+sin(2*theta)**2/(4.*lambda**3*(1-sin(theta)**2/lambda**2)**(3/2.)) v1(theta)=sin(theta)+sin(2*theta)/(2.*lambda*(1-sin(theta)**2/lambda**2)**(1/2.)) Ti1(theta)=-a1(theta)*v1(theta) lambda=4 plot Ti1(theta)+Ti1(theta-180)+Ti1(theta-360)+Ti1(theta-540) replot Ti1(theta)+Ti1(theta-90)+Ti1(theta-90-270)+Ti1(theta-90-270-90) replot Ti1(theta)+Ti1(theta-90)+Ti1(theta-290)+Ti1(theta-380) replot Ti1(theta)+Ti1(theta-270)+Ti1(theta-270-180)+Ti1(theta-270-180-90) # (dummy comment) ここまで考察したことをまとめると、70度クランクは 「360度クランクより慣性トルクを小さくでき、180度クランクのような排気系の問題がない」 という特色があるといえるかと思います ここで360度クランク・180度クランク・70度クランク以外で慣性トルクの変動幅はどうなるのか? ということを見てみましょう クランクピンのオフセット角度をβとして0度(360度)から180度まで変化させた場合の慣性トルクの変動幅 をプロットすると以下のようになります https://i.imgur.com/CK1WZ7Z.png 見ての通りβ=60度弱(連桿比λ=4で計算すると約57度)のあたりに慣性トルクが約8%まで小さくなる特徴的な点があります この角度で慣性トルクが小さくなる理由は、90度V型2気筒で残っていた慣性トルクの3次成分が角度60度(π/3 ラジアン) の場合に https://i.imgur.com/3ebvLhs.jpg と打ち消されるからと考えるとわかりやすいでしょう (1次と4次の成分は残るので60度ちょうどからは少しズレるわけです) 逆に角度120度(2π/3 ラジアン)の場合には https://i.imgur.com/kUHMx7L.jpg と足し合わせになるためグラフのβ=120度付近が山となっています というわけでβ=57度の場合のグラフを70度クランクの場合と比べてみましょう https://i.imgur.com/WlgSPie.png 単純に慣性トルクの振幅が小さいほど良い、と仮定すれば57度あるいはキリの良いところで60度にでもしてしまえば 良さそうなものですが(というか私はそう結論付けて1年間ほど放置していたのですが)、実際にはドゥカティは70度の クランク角としています というわけで慣性トルクを積分したエネルギーのやりとりからなんとかその理由をひねり出してみたのですが、とりあえず 今日はここまで ここから先どのように続けるか悩ましい、というか私の説明力では多分なにを言いたいのやら伝わらない 気もしますが続けていきます まずピストンとクランクシャフトだけ、つまりエンジン単体で考えた場合クランクシャフトに慣性トルクが 作用することでクランクシャフトには回転角加速度の変動が生じることになります 実際の走行時にはクラッチが繋がり車体全体で考えるわけですが、クランクシャフトのトルク変動はギヤ 輪列とスプロケットによる減速により後軸でのトルク変動になり、これをリアタイヤ半径で割ることで タイヤ面に働く駆動力の変動となります (バイクの場合チェーンという考えるのがややこしそうなものがありますが理想的な機械要素であるとして無視します) 駆動力Fが変動するということは車体の加速度aが変動するということになり、その結果車体の速度vが変動します 例えば普通のシングルプレーン直列4気筒の場合慣性トルクの変動は2次、つまりクランク1回転に2回の 変動で12000rpmの場合1秒間に12000/60*2=400回も車速が正負にブレるということになり、体感的には 「本当にそんな変動あるんかいな?」と思えますが実際に古澤氏がホイール速度センサーを用いて 周波数解析するとちゃんと2次の速度変動があらわれている、としています https://i.imgur.com/cEWj0Od.jpg 図のオレンジの丸は私が付け加えたものですが、ここは減速時でスロットルを閉じているのに派手に変動が 生じていますからエンジンブレーキでエンジン回転数が上昇していることによるものかと思います このような順序でトルク変動からタイヤ面での駆動力変動を求め、さらに車体の加速度変動を求めて それを積分することで速度変動を求めるという手順があるわけですが、物理の世界では力やトルクで なく運動エネルギーで物事を考えたほうがスッキリする場合も多いのでそちらで考えてみましょう 車体の速度が変動しているということは車体全体の運動エネルギー(前後輪などの回転要素の運動エネルギー 含む)が変動しているということですが、エネルギーの保存則というものがある以上その変動に相当する 他の運動エネルギーの変動源があるはずです で、そのような運動エネルギーの変動源というのはピストン(往復質量)しかありませんから、結局 往復質量の運動エネルギー1/2mv^2だけを見れば車体の速度変動が評価できる、ということになります 一応慣性トルクと運動エネルギーがどう関係するのかも見ておきましょう (ここは読み飛ばして大丈夫です) >>46 に挙げたWikipediaのテンプレートによると、トルク(力のモーメント)をTとすると仕事(エネルギーの変化)Wは https://i.imgur.com/SvDGL2t.jpg ですから、慣性トルクTiをを角度θで積分することで慣性トルクTiによってクランクシャフトになされる仕事が求められます ここで慣性トルクの近似式 https://i.imgur.com/P6a9GcC.jpg の三角関数部分をf(θ)と置くと https://i.imgur.com/s5LNfx1.jpg f(θ)の不定積分F(θ)は https://i.imgur.com/Jp4nKek.jpg よって慣性トルクTiが角度0から角度θまでにクランクシャフトになす仕事は、 https://i.imgur.com/2RVDVcU.jpg …などと式ばかり書いても意味がわからないのでグラフを描くと https://i.imgur.com/eOoqIeI.png となります グラフが0から始まってマイナスになりθ=180度や360度では0に戻るということは、θ=0度を基準とすると慣性トルクが 作用することでクランクシャフト以降から運動エネルギーが奪われ、下死点や上死点でまた戻ってくるということを意味 しています これに対し往復質量の運動エネルギーKrecを計算してみます 往復質量の速度v https://i.imgur.com/5QJj8fw.jpg から往復質量の運動エネルギーKrec=1/2*mv^2を計算すると https://i.imgur.com/AEOeOB5.jpg で、これは先に計算したクランクシャフト以降のエネルギー変化Wに対して符号が反対となった式です グラフに描くと https://i.imgur.com/cOCHalP.png というわけで慣性トルクが働くということは往復質量の運動エネルギーの分クランクシャフト以降の運動エネルギーが 変動するという現象をを微積分を通じて別の形で表現していることになります ちなみに>>112 の三角関数の計算にはMaximaを使っています 興味のある方は以下のコマンドをMaximaのウィンドウに貼り付けShift+Enterキーを押してみてください (今日はここまで) /* Maximaの状態をリセット */ kill(all)$ /* 速度vを入力(係数rw除く) */ v:sin(%theta)+sin(2*%theta)/(2*%lambda); /* 係数mを省略した運動エネルギー1/2*v^2を求め、三角関数を整理 */ trigrat(1/2*v^2); /* 式の展開 */ expand(%); さていろいろゴチャゴチャ書いてきましたが要するに各気筒の往復質量の運動エネルギーを計算して 足し合わせたものを考えればよいわけで、実際グラフに描くとこんな感じになります https://i.imgur.com/L2BZtMq.png シングルプレーン直列4気筒では2気筒が上死点、2気筒が下死点となって運動エネルギーが0になる瞬間が ありますから運動エネルギーの和の変動は大きくなります それに対しクロスプレーン直列4気筒や180度クランクV型4気筒では各気筒が運動エネルギーを補い合い その合計はあまり変動しない、つまりクランクシャフト以降の運動エネルギーもほとんど変化しないことが わかります こういった意味でヤマハのサイトのクロスプレーンの説明にある https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/yamaha-motor-life/2011/11/post-76.html > そこで遅いクランク回転をする気筒と、速いクランク回転の気筒を互いに連結するのが「クロスプレーン型クランクシャフト」の仕組みです。 というのはある的を射た良い表現ではあるのですが、 > 減速から増速に移る90°と270°では遅くなります。 のあたりが説明を端折りすぎというか、そもそも理系の人間としてはいちいち文章で説明されるより計算式 を書いておいてくれたほうが助かるのに全く式を示してくれないのが困ったところです (なので自分で調べて計算することになった) ってまあ私はヤマハのバイクを買ったこともないのでヤマハに文句を言う資格も無いのですが >>115 のグラフのgnuplotのサンプルも示しておきます set angles degrees set samples 500 set xrange[0:720] set grid set xtics 45 set dummy theta v1(theta)=sin(theta)+sin(2*theta)/(2.*lambda*(1-sin(theta)**2/lambda**2)**(1/2.)) Krec1(theta)=1/2.*v1(theta)**2 lambda=4 plot 2*(Krec1(theta)+Krec1(theta-180)) replot 2*(Krec1(theta)+Krec1(theta-90)) replot Krec1(theta)+Krec1(theta-90)+Krec1(theta+70)+Krec1(theta+70-90) replot Krec1(theta)+Krec1(theta-90)+Krec1(theta-180)+Krec1(theta-270) # (dummy comment) >>115 のグラフでは上下の変動幅が分かりづらいので、それぞれのプロットから最小値を差し引いたものを描いてみます https://i.imgur.com/KMLuAUy.png この図の 360度クランク:36% 70度クランク:14% 180度クランク:2% に相当する値が、クランクピンオフセット角度βを変化させた場合にどう変化するかを見ると以下のようになります https://i.imgur.com/iLNJ1U7.png 図のように連桿比λ=4の場合にβ=約68度のところに特徴的な点があり、y軸の値は約13%となります この角度は実際のドゥカティのクランク角度70度に近い値ですから 「排気干渉の大きいβ=180度の側を除いた範囲で最も往復運動の運動のエネルギーの和の変動が小さい角度」 にすることで車体の速度変動を小さくするという、ヤマハの古澤氏のクロスプレーン直4と同様の思想で作られたのがドゥカティ の70度クランクではないか?というのが私の結論です さてどんな理屈があってもバイクは実際人が乗って走らせてみなければ良し悪しがわかりません 2004シーズンに向けヤマハで初めてクロスプレーン直列4気筒エンジンが製作されロッシによりシングルプレーン と比較テストが行われた際のエピソードは有名ですね https://global.yamaha-motor.com/jp/race/wgp-50th/column/vol31/ > 0WP3は、その後テスト走行を重ねて調整が施され、シェイクダウンから1ヵ月後の2004年1月末、 > マレーシアのセパンへ持ち込まれた。この時、初めてライディングしたバレンティーノ・ロッシは「Sweet」と絶賛。 ここで現在のドゥカティのボスのジジ・ダッリーニャの前任であったフィリッポ・プレツィオージ氏と古澤氏の関係性を 見てみましょう 古澤氏の退任直前の2011年2月のインタビューを読むと Masao Furusawa reflects on MotoGP career https://www.crash.net/motogp/interview/166485/1/furusawa-reflects-on-eve-of-yamaha-motogp-exit > You know Filippo [Preziosi, Ducati Corse general director] came to me and asked lots of questions. > The last question was 'will you come to Ducati?' [laughs]. > No, no, no. Anyway I gave him lots of hints to win and it looks like he copied my strategy. 「フィリッポは私のところへ来てたくさんの質問をしていった」 「彼には勝つためのたくさんのヒントを与え、彼は私の戦略をコピーしているようだ」 > Filippo did almost the same process as I did for Rossi in 2004. > He prepared maybe two or three types of bike in Valencia. > And Valentino selected the 'right' one. But from now on I don't want to say anything. 「フィリッポは私が2004年にロッシにしたこととほとんど同じプロセスをした」 「彼はバレンシアテストに2種類か3種類のバイクを用意し、ロッシは『正しい』バイクを選んだ」 「これ以上は言えませんが」 私にはこの内容はプレツィオージ氏と古澤氏が同じ考えを共有し、>>118 の2004年のエピソードと同様にロッシに いくつかのクランク角のV4エンジンを用意してその中から選ばせた、ということに思えます (いや、それとは全然関係ないシャシー側の話だったりする可能性もありますけど) 長いスレをほぼ私一人で埋め尽くしてきましたが、だいたいこれで話は終わりです なにか私の計算や説明で致命的におかしいぞ、というところがあればご指摘をいただければ幸いです (けっこう文章を書くのに疲れはてたので返答は遅れるかもしれませんが) >>122 いやまあ一通り説明すべきことは書き終えたので まだクロスプレーン直4の特許とかYZF-R1のクランクシャフトはなんであんなにカクカクしてるのかとか いろいろネタはあるのですが さてここから先はゆっくりネタを追加していきましょうか 2017年に自動車技術会(JSAE)のこのようなシンポジウムあありまして モータースポーツ技術と文化 ─進化し続ける開発手法の最前線─ 2017年3月1日(水) https://www.jsae.or.jp/sympo/2016/sympo_15-16.php HRCの人がこんな公演をしています MotoGP 開発における完成車シミュレーション技術 Simulation Technology Applied to Development of MotoGP Racing Machine https://tech.jsae.or.jp/paperinfo/ja/content/st201615.03/ 一部引用すると > 通常,完成車シミュレーションに用いられるエンジンモデルは,台上試験にて計測された定常トルクを用いて構築される場合が多い. > (略) 本稿では,クランク機構を有し,台上計測した各気筒の筒内圧力を入力とするエンジンモデルを構築した. > このモデルでは,各気筒の燃焼やクランク位相,ピストンなどの往復慣性力によってクランク機構が発生するトルク変動や並進運動が再現される. とあり、ホンダもこの時点で慣性トルクの影響について真面目に考えていることがわかります ホンダのRC213Vがいわゆるスクリーマー(実際には360度クランクのはずだが判断材料は排気音のみなので便宜的にこう記す) をやめて360度クランク以外のクランク角としたのは2017シーズンからですから、やはりその狙いは慣性トルクに関することであろう、 と個人的には考えています ただその場合のクランク角の候補としては、 A:クランクシャフトの角加速度、あるいは車体の加速度の変動が問題である場合(またはタイヤ面にかかる駆動力が問題である場合) →>>107 に示した約57度あたりのクランク角 B:クランクシャフトの角速度、あるいは車体の速度の変動が問題である場合 →>>117 に示した約68度あたりのクランク角 の2つの角度が候補として挙げられますが、正直まあライダーがこういった変動をどのように感覚としてとらえラップタイムに 影響しているのかなんてのは誰にも良くわからん話の気がします もちろんこの2つだけでなくいくつかの角度のクランク(とカムシャフト)を10度きざみくらいで試作して実走テストしてみても良い のでしょうけど、それぞれ排気系も最適化して設計製作しないといけないでしょうからまあまあ大変そうです ただ、Bの場合ドゥカティが10年も前の市販車デスモセディチRRで公表した70度クランクの猿真似でかっこ悪いので、自分が ホンダの技術者であれば60度付近のクランク角を選ぶかもしれません まあよー知らんけど >>124 変換ミス ×HRCの人がこんな公演をしています ○HRCの人がこんな講演をしています 慣性トルクの話からは少し外れますが、>>125 で引用した文章の > 往復慣性力によってクランク機構が発生するトルク変動や並進運動 にあるような往復慣性力による並進運動、つまり一般的な意味でのエンジンの振動についても触れておきましょう まず90度V型2気筒エンジンの1次慣性力、2次慣性力は以下のサイトの図のようになります https://www.sense.net/ ~blaine/twin/twin.html https://www.sense.net/ ~blaine/twin/Guzzi.gif ここで大きく回転する青色の矢印は1次慣性力で、これはクランクウェブに適切な質量のバランスウェイトを加える ことで打ち消すことができます 左右にひょこひょこ動く赤色の矢印が2次慣性力で、F1やフェラーリ市販車で用いられるフラットプレーンクランクV8 はこれが4スロー分重ね合わせとなるため大きな振動が問題となります (縦置きエンジンとすると車両を水平方向に左右に振動させる) さて、ここでホンダで数々のV4エンジン車両を手掛けた山中勲氏の手記を見てみましょう https://www.honda.co.jp/motor-roots/contents7/page2.html 180度クランクV4であるVFR750F(RC24)について、 > また90度V4エンジンは理論上一次振動がゼロとなるが、180度クランクに変更して二次振動も限りなく小さくした。 としていますが、前半の1次振動の部分は正しいのですが後半の2次振動の部分は明らかに間違いです 2次振動、つまりcos2θの振動ですから、180度の位相差で組み合わせたところで180×2=360度となり単純に重ね 合わせとなるだけです 例えば先に挙げた四輪のフラットプレーンクランクV8について考察してみると、このV8エンジンを中央で2つに切断 すると2基の180度クランクV4になると言えるわけで、逆に言えば180度クランクV4を2つ組み合わせたものが フラットプレーンクランクV8です ここで山中氏の言われるように「180度クランクに変更して二次振動も限りなく小さく」なるのであれば180度クランクV4 を2つ組み合わせたフラットプレーンクランクV8の2次振動なんてものは問題にならないわけですから、世の中の V8エンジンは全てフラットプレーンクランクとなるでしょうが、実際には2次振動を打ち消すためにほとんどの市販車は クロスプレーンクランクV8を積んでいます このあたり、興味のある方は大阪市立大学 坂上茂樹教授の 三菱航空発動機技術史 https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/111C0000001-77.pdf のp..218〜 補論:90°V8 型発動機用クランク軸の進化 あたりも読んでみると良いでしょう ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
read.cgi ver 07.5.5 2024/06/08 Walang Kapalit ★ | Donguri System Team 5ちゃんねる