認知症患者の6〜7割を占めるアルツハイマー病に関し、病気の原因に関する先駆けとなった研究で不正が指摘されている。米科学誌「サイエンス」に7月、米ミネソタ大の神経科学者らが発表した論文に、改ざんの疑いがあるとの記事が掲載された。

疑惑指摘の論文、多数で引用される
 脳内では、異常なたんぱく質「アミロイドベータ(Aβ)」が神経細胞の周辺に複数集まって「オリゴマー」(神経への毒性が高いたんぱく質)になると、細胞が傷付けられて死に、その影響でアルツハイマー病が発症すると考えられている。

 疑惑が指摘された論文は2006年、英科学誌「ネイチャー」に発表された。当時、「アルツハイマー病の研究で、記憶障害を引き起こすオリゴマーを初めて見つけた」として評価された。

 その後、アルツハイマーに関する研究が進み、これまでに約2300回も他の研究の論文に引用されてきた。それだけに、改ざんが事実なら影響が出かねない。

 問題の論文を書いたのは、ミネソタ大の神経科学者、シルバン・レスネ准教授ら。レスネ氏らは、遺伝子を改変したマウスの脳内で、ヒトのAβが複数集まったオリゴマーを発生させた。その中から、10個ほどのAβが集まったオリゴマーを取り出して、若いラットに入れる実験をした。

 その結果、ラットに認知症の症状が表れたと説明していた。

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https://mainichi.jp/articles/20220816/k00/00m/040/059000c