→天王星の自転軸を98度も傾けた衝突天体の有力なモデルが判明
→地球の1〜3倍の質量を持つ氷状天体の可能性が高い

太陽系の7番目に位置する「天王星(Uranus)」は、木星、土星に次いで大きな太陽系惑星です。
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公転周期が84年もあるので、極地点では、昼と夜が42年間も続きます。

その最大の特徴として、自転軸が公転軌道面に対して98度も傾いていることが挙げられます。いわば、天王星は、ほぼ完全な横倒れ状態にあるのです。

その原因としては、天王星の形成初期に何らかの天体が衝突した「ジャイアント・インパクト説」が最有力となっています。

しかし、これまでのコンピューター・シミュレーションでは、現在の天王星システムを形づくるモデルは見つかっていませんでした。

ところが今回、東京工業大学 地球生命研究所により、天王星を98度も傾けた衝突体のモデルが発見されたとのことです。

研究の詳細は、3月30日付けで「Nature Astronomy」に掲載されています。

Uranian satellite formation by evolution of a water vapour disk generated by a giant impact
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1049-8

■天王星の「衛星」と「輪っか」はなぜできた?

天王星は、主に氷状物質とガスからなる氷惑星です。

現在、天王星の周囲には、直径10メートル以下の暗い物質でできた薄い環と27個の衛星が見つかっています。

ところが、ジャイアント・インパクト説を証明するには、こうした天王星のシステムがネックとなっていました。

例えば、これまでのシミュレーションでは、天体衝突後、デブリ(破片)によって作り出される環の質量が、現在ある天王星衛星の総重量を踏まえると、あるべき質量値をはるかにオーバーしてしまうのです。
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しかし今回、研究チームの新たなシミュレーションにより、現在の天王星システムを生み出すモデリングの作成に成功しています。

鍵を握るのは、衝突天体が「氷状の塊」だということです。

■ぶつかったのは地球より巨大な「氷塊」だった?

まずもって、天王星が位置するような太陽から遠く離れた場所では、月を生み出したとされる地球のジャイアント・インパクト説とは異なる結果をもたらします。

月は、原始地球と火星サイズの「テイア」と呼ばれる天体との衝突で生まれました。

どちらも氷ではなく、岩石を主成分としており、衝突によって吹き飛ばされたデブリは、岩石ゆえに素早く固まり、新たに岩石衛星の月を生み出しました。

生まれたばかりの月は、重力により周囲のデブリを取り込み、現在の大きさまで成長したのです。

一方で、原始状態の天王星にぶつかった天体は、巨大な氷塊だったと考えられます。

衝突で四散したデブリは岩石ではなく、水やアンモニアを含む揮発性の高いものであり、長期にわたってガス状のまま留まりました。

すると、成長を続ける天王星が、周囲のデブリからガス部分だけを取り込みます。それにより、四散したデブリからガスがなくなり、現在ある衛星の材料が残ったというわけです。
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この原理に、自転軸の傾きや現在の衛星の総質量などを考慮に入れると、衝突した氷塊は、地球の1〜3倍の質量におよぶと推定されます。

このサイズの氷塊が衝突すれば、現在の衛星や環の存在だけでなく、自転の速さも説明がつきます。天王星の自転速度は、1周わずか17時間であり、サイズの小さい地球よりもかなり速いです。

研究チームは、「今回のモデルは、天王星が持つ衛星の形成メカニズムを説明する初めてのものであり、海王星のような他の氷惑星についても同様のモデルが当てはまるかもしれない」と述べています。


https://nazology.net/archives/56108