海上自衛隊のいずも型護衛艦に搭載予定のF-35Bステルス戦闘機ですが、一方でF-35には艦載型をうたうF-35Cもラインナップされています。そもそも「艦載機」とは、どのような特徴を備えるものなのでしょうか。

■艦載されているけど「艦載型」じゃない「B」

2018年12月18日に政府が発表した「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」には、海上自衛隊のいずも型護衛艦を改修し、事実上の空母とすることなどが明記され、大きな話題になりました。具体的には、既存の艦艇へ「短距離離陸・垂直着陸できる航空機の運用を可能にする必要な措置」を講じるとしており、この「航空機」に該当するのが、最新のステルス戦闘機F-35Bです。

「F-35」といえば、2018年に航空自衛隊が導入し運用を開始しているF-35Aが知られますが、この「A」はいわゆる通常のステルス戦闘機で、「B」はその姉妹機にあたります。上述のように、「A」にはないSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)性能を備え、アメリカ海兵隊ではこれを空母のような飛行甲板を持つ強襲揚陸艦で運用しており、イギリス軍では、スキーのジャンプ台のような形状の発艦装置を持った空母「クイーン・エリザベス」で運用しています。

 このように、F-35Bは大きなくくりにおいて、F-35AやF-16など航空基地でのみ運用される航空機(以下「陸上機」)に対する「艦載機」、つまり空母などの艦艇に搭載して運用が可能な航空機に含まれるといえるかもしれません。ところがF-35には、「B」とは別に「艦載機型」として、「F-35C」というモデルがラインナップされています。

 ではこの「艦載機」とは、どのような点で陸上機と異なるのでしょうか。

■そもそも「艦載機」とは?

 そもそも「艦載機」とは前述のように、空母などの艦艇に搭載し運用することを想定した航空機のことです。このカテゴリーには、戦闘機や攻撃機、輸送機や早期警戒機といった固定翼機(いわゆる飛行機)のほかにも、哨戒ヘリや救難ヘリなどの回転翼機(ヘリコプター)も含まれますが、以下は固定翼機について述べていきます。

 艦載機にはもちろん、地上機とは異なる特徴が見られます。そのひとつが、機体後部にあるアレスティング・フックおよび着艦動作の一連の手順でしょう。

戦闘機を運用する航空基地の多くは、3000m級の滑走路を持っています。しかし、飛行甲板とカタパルト(射出装置)を備える空母上で、発艦に使える距離は約80m、着艦には約90mと、おおむね航空基地滑走路の30分の1程度しかありません。そのため艦載機は、発艦時には前出のカタパルトを使用し、着艦時には機体後部にあるアレスティング・フックを、空母の飛行甲板上に張られたワイヤーに引っ掛けて速度を落とし機体を止めます。

 このフックは、実は陸上機にも見られるものです。しかし、あくまで事故などの緊急時に地上の滑走路上で使用する陸上機のそれに対し、艦載機のものは250km/h程度で着艦してくる機体を約90m程度の距離で止めるためのものであり、陸上機のものに比べて非常に頑丈に作られています。

■重いのも特徴のひとつ

そのほかの特徴として、艦載機はスペースの限られた艦艇上で運用されるため、翼や胴体の一部が折りたためるようになっており、また、洋上を飛行する時間が長いため、機体には塩害からの防護処置が施されているといった点が挙げられます。

 これらの特徴を持つ艦載機ですが、その結果として、機体重量は陸上機などよりも重くなる傾向にあります。そしてその重さも、機体に頑丈さが求められる要因のひとつといえるでしょう。

 こうして「艦載機」の特徴を挙げてみると、F-35BはそもそもSTOVL機であり、そうした「艦載機」の特徴を必ずしも備えません。対しF-35Cは、高度に自動化された着艦システムを搭載するなど従来とは少し異なるとはいえ、主翼を折りたためるなど、やはり艦載機の特徴を備えているといえるでしょう。

 ちなみに艦載機は、陸上機としての運用もしばしば見られます。航空自衛隊も運用しており、そのひとつが、艦載機F-4を原型とするF-4EJ改「ファントムII」戦闘機です。1971(昭和46)年に航空自衛隊が導入して以来、改修などを施しつつも、約47年以上の長期に渡り運用が続けられていて、これも艦載機出身ゆえの頑丈な機体設計のために実現しているともいえるでしょう。

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