政府の高速炉開発の柱となる高速実験炉「常陽」(茨城県)の運転再開に向けた審査を巡り、日本原子力研究開発機構は26日、設計を見直し、熱出力を14万キロワットから10万キロワットに縮小する、と発表した。避難計画作りが必要な自治体が半径30キロ圏から5キロ圏に狭まり、説明する対象の自治体を減らすことで、早期の再開をめざす考えだ。

 機構は26日、原子炉に入れる燃料を85体から79体に減らすよう設計を変えた申請書類を原子力規制委員会に提出した。理由について「安全性強化のため」と説明した。地震の揺れの想定(基準地震動)を引き上げたため、耐震補強工事費などが増え、対策費は約54億円から約170億円に膨らむ見通し。運転再開の目標は、これまでより1年遅れの2022年度末としている。

 機構は昨年3月、運転再開に向けた審査を規制委に申請し、14万キロワットの設計のまま10万キロワットで運転すると説明した。これに対し、当時の田中俊一・規制委員長は「ナナハン(大型バイク)を30キロ以下で運転するから、原付きバイクの免許でいいと言っているようなもの」「福島第一原発事故を反省しているのか。説明に手間取るという言い方をしており、地元に対する意識がおかしい」などと批判。規制委は審査を保留していた。

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉が決まり、政府は年内に今後10年間の高速炉開発の工程表をつくる方針。14年の日仏合意で、常陽ではフランスの高速炉「アストリッド(ASTRID)」計画の一環として、共同の照射試験などが計画されている。

朝日新聞デジタル
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