CERN(欧州原子核研究機構)の大型加速器「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」を使った実験で、
最も重い2つの粒子であるトップクォークとヒッグス粒子が一つの陽子衝突から
同時に誕生したことを示す発見がありました。これは世界で初めて観測されたもので、
この宇宙に「質量」というものが存在する起源を理解する上で重要な発見となります。

UZH - Direct Coupling of the Higgs Boson to the Top Quark Observed
http://www.media.uzh.ch/en/Press-Releases/2018/CMS-Experiment.html

ヒッグス粒子は「神の粒子」とも呼ばれる素粒子で、物質に質量をもたらすことで引力を生み出し、
この宇宙が存在できる究極の根源になっているとも考えられています。
その概念は1964年にピーター・ヒッグス教授によって予言されていたのですが、
実際に2012年にヒッグス粒子とみられる新粒子が発見されており、
ヒッグス氏は2013年のノーベル物理学賞を受賞しています。

しかし、ヒッグス粒子は目に見えず、センサーで検知することもできません。
非常に概念を理解することが難しいものですが、「雪」を使って表現すると、
その仕組みや重要性が少し理解しやすくなります。

現地時間の2018年6月4日、LHCに設置された粒子検出器「CMS(小型ミューオンソレノイド)」と
「ATLAS(トロイド型LHC観測装置)」と使った実験の中で、
ヒッグス粒子とトップクォークが直接相互作用していることを世界で初めて確認したことが発表されました。

この成果について、アメリカエネルギー省に属するフェルミ国立加速器研究所の研究者であるBoaz Klima氏は
「この観測は、物理学の標準模型において2つの最も重い粒子を直接結び付けるものとなります」と、
物理学をさらに一歩進める大きな発見であることを述べています。


物質に質量を与えるヒッグス粒子およびヒッグス場は長い間その実態が解明されていませんでしたが、
LHCで2012年にヒッグス粒子が確認されたことでその姿が明らかにされつつあり、
次のステップは「予測を精査し、理論に沿っているかどうか」を確認する段階にあります。
ここでの大きな疑問は「ヒッグス粒子がクォークと相互作用できるかどうか、もし可能ならば、
その関係はどのように見ることができるのか」というところにありました。

ヒッグス粒子が素粒子の中でも最大であるトップクォークと最も強く相互反応するであろうことは
科学者の間で認識されてきましたが、これまでの結果は全てその相互作用を裏付けるための
「しきい値」を下回るものばかりだったとのこと。今回、CMSの研究チームが発表した論文と、
ATLASの研究チームによる論文では、
ヒッグス粒子が予想どおりにトップクォークと相互作用を行っていたことが明らかにされており、
進むべき方向性が示されています。

https://i.gzn.jp/img/2018/06/05/higgs-boson-top-quark-direct-coupling-observed/00_m.jpg

関連動画
New results proving that the top quark acquires its mass from the Higgs ...
https://youtu.be/JFJpPpVI7u4

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180605-higgs-boson-top-quark-direct-coupling-observed/