グレート・バリア・リーフが死に瀕しているのは周知の事実だ。
気候変動による海水温の上昇で、サンゴは息絶えつつある。この危機に終止符を打つべく、
オーストラリアが対策に乗り出した。

 1月16日、オーストラリア政府は160万米ドル(200万豪ドル)規模の構想を発表。
全長2200キロの豊かなサンゴ礁を取り戻すため、プロジェクトの立案を科学者たちに呼びかけた。
2018年2月上旬に国際コンペの説明会を開き、3月6日に受け付けを終了する予定だ。

〈「解決策はどこからでも」〉

 技術革新を促進するクイーンズランド州政府の事業「アドバンス・クイーンズランド」が発表した概要によると、
科学者、産業界のリーダー、イノベーター、起業家らから、
人間の活動で被害を受けたサンゴ礁をよみがえらせる計画を募集している。
これは観光事業者、沿岸の自治体、地元の水産業者と連携した事業になる。

 コンペで選ばれた案については、まず20万ドル近い資金を使って、
最長で6カ月かけてその実現可能性が試される。その中で有効とされたものについては、
約80万ドルの支援を追加で受け、最長12カ月にわたって計画を練り上げることになる。

「スケールの大きな問題であり、大局的な考え方が必要です。
しかし、解決策はどこからでも生まれうることを忘れてはなりません」と、
オーストラリアのジョシュ・フライデンバーグ環境相はAFP通信に語っている。

 海水温の上昇によって起きている深刻な問題の1つは、急速なサンゴの白化だ。
ストレスにさらされたサンゴが、生きるのに欠かせない色鮮やかな共生藻を排出する現象である。
こうして脆弱で栄養不足になったサンゴ礁はほかの種を支えられず、
サンゴを土台にした海の生態系が死に絶えてしまう。

 2016年と17年の夏には、グレート・バリア・リーフのあちこちで大規模な白化が発生した。
世界中の海洋底のうち、サンゴ礁が占める割合はわずか0.1%しかないが、
全ての海洋生物の25%以上にすみかを提供しており、さまざまな種がひしめき合っている。

 だが、海洋生物のすみかであるサンゴ礁が失われる要因は気候変動だけではない。
農地からの栄養豊富な排水や、開発に伴う工業用化学物質も海水中に漏れ出て、サンゴに被害を与えている。
加えて、温室効果ガスが大気中に増えると、二酸化炭素が海に溶け込み、海水のpH値を下げる(つまり、酸性度が増す)。
そうなると、魚をはじめ、カメ、カニ、その他の無脊椎動物などサンゴ礁の生きものにとって、生息に適した環境ではなくなってしまう。
また、南の一帯では、サンゴを食べるオニヒトデの増加も脅威となっている。

 ハワイ大学教授でサンゴの専門家であるロバート・リッチモンド氏は、2017年4月、
ナショナル ジオグラフィックの取材に対し「サンゴは復活力のある生物です」と語った。
「ただし、よみがえるチャンスを与えられればの話です。サンゴへの打撃は全く止んでおらず、
問題の深刻さは時と共に増すばかりです」

続きはソースで

画像:オーストラリアのグレート・バリア・リーフでは、サンゴの大規模な死滅が問題となっている。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/011800019/ph_thumb.jpg

※応募要項はこちら(※英語の外部サイトです)
https://advance.qld.gov.au/entrepreneurs-startups/sbir/challenges/boosting-coral-abundance-gbr-challenge.aspx

ナショナルジオグラフィック日本版サイト
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/011800019/