【ワシントン=永沢毅】トランプ米大統領は11日夜、ホワイトハウスから国民向けにテレビ演説し、新型コロナウイルスの感染拡大への対応策を発表した。英国を除く欧州に過去14日間滞在した外国人の入国を禁止するのが柱となる。中小企業の資金繰り支援なども打ち出した。米国での感染拡大に歯止めをかけるため異例の強力な措置をとるが、企業活動や観光など実体経済への広範な影響は避けられない。

欧州からの入国禁止措置は米東部時間13日夜(日本時間14日未明)から30日間で、適切な検査を受けた米国人は対象外となる。トランプ氏は「ウイルスとの戦いで極めて重要なときだ」と述べ、国民に協力と理解を求めた。米国はすでに中国やイランに過去14日間滞在した外国人の入国を拒否しており、欧州に対しても同じ措置をとる。

トランプ氏は経済対策として、中小企業の資金繰り支援を表明。議会に500億ドル(約5兆2500億円)の予算措置を求めた。個人や企業の納税申告を現行期限の4月15日から延長する措置を講じるほか、病欠や自宅待機などで働けない人への給与支援も実施すると明らかにした。

さらに、トランプ氏は景気下支えのため給与税の免除に改めて意欲を示した。詳細について米議会と調整に入っており、この日の演説では中身を明らかにしなかった。

トランプ氏は「米国民を守るために必要な措置をとることをちゅうちょしない」と述べ、柔軟に追加対策を講じる構えを示した。政権内では非常事態宣言も取り沙汰されていたが、今回は宣言を見送った。

米国はこれまで海外への渡航に関し、中国とイランの全土、韓国とイタリアは一部地域への訪問を取りやめるよう米国人に呼びかけている。これらは米疾病対策センター(CDC)が指定する警戒レベルに基づくもので、中国、イラン、韓国、イタリアは最高の「警戒レベル3」になっている。
2020/3/12 10:13 (2020/3/12 11:04更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56694710S0A310C2MM0000/