9日午前の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前日比268円安の2万1334円で終えた。「中国が約束を破ったからだ」――。米中協議の難航についてトランプ米大統領から、こんな発言が飛び出し、下げ幅は一時290円近くに広がった。だが、株安の原因は外患ばかりではない。住宅問題を巡る内憂も投資家心理に影を落としている。

令和に入ってから日経平均は前場までに3日続落し、下げ幅は900円あまりに達した。この間に国内で浮上した新たな懸念材料は、住宅金融支援機構が提供する長期固定金利型の住宅ローン「フラット35」を巡る不正利用疑惑だ。

住宅ローンを手がけ、フラット35の取り扱いで最大手のアルヒは連休明けの7日に制限値幅の下限(ストップ安水準、19%安)まで売り込まれ、8日も5%超下落した。きょうは反発しているが、代わって大東建託や大和ハウス工業など他の住宅株に売りが広がっている。

業種別日経平均株価の「建設」は一時、2016年10月以来約2年7カ月ぶりの安値を付けた。住宅ローン審査の厳格化に伴う事業環境の悪化やオリンピック建設ブームの反動が懸念されている。銀行株もさえない。

昨年のスルガ銀行の不適切融資やTATERUによる融資資料改ざん問題、レオパレス21の施工不良問題など、住宅や不動産、建設を巡っては不祥事が相次いでいる。「不動産市況の悪化による業績鈍化を警戒する売りが目立つ」と岡三証券の小川佳紀・日本株式戦略グループ長はため息をつく。

ある40代のサラリーマン不動産投資家は「昨夏以降、融資申請が一段と厳しくなっている。新規物件を取得できない状況が続いており、足元では申請そのものを見送っている」と明かす。

前場の取引時間中にはトヨタ自動車とパナソニックが住宅事業の統合を発表したが、市場では「先細り業界の生き残り策」と冷ややかな見方もある。

金融緩和であふれたマネーが行き場を求めて不動産に流れ込み、平成末期にはミニバブル的な色彩を濃くしていた。そうしたツケが顕在化しつつあるのだとしたら……。令和相場の先行きには不穏な空気が漂い始めている。

〔日経QUICKニュース(NQN) 末藤加恵〕

2019/5/9 12:38
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL09HM4_Z00C19A5000000/