国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の総会が8日、京都市で開幕した。世界の科学者や政府関係者など約360人が集まり、各国の温暖化ガスの排出量を正確に測る手法について12日まで議論する。効果的な温暖化対策の導入に向けて、新興国を含め計測の誤差を抑えるための新たなガイドラインをまとめる方針だ。

温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は批准する約180の国に温暖化ガスの排出削減を求めている。IPCCは2006年に現在のガイドラインを策定したが、古くなったため各国の実態にそぐわず、産業別などで正確に把握できなくなってきたといわれる。インフラが整わない新興国での観測も課題となっている。

今回の総会では最新の科学的知見に基づき、ガイドラインを13年ぶりに見直す。気温の違いや土壌の種類など、細かな地理的条件に合わせた計測基準を設ける見通しだ。水素製造に伴う排出などについても基準の導入を検討する。

今年2月に運用が始まった日本の温暖化ガス観測衛星「いぶき2号」の活用についても議論する。宇宙から観測したデータを、新興国などの排出量の報告の検証に役立てられるとみている。

温暖化の長期予測の信頼性を高めるためには、前提となるデータの正確性が欠かせない。経済成長が続く新興国では、温暖化ガスの排出量が急増している。計測データの誤差が大きくなれば、予測の精度が失われる。

IPCC総会の国内での開催は14年の横浜市以来2度目。13日に報告書を公表する。

IPCCの李会晟(イ・フェソン)議長は8日の開幕式で「温暖化ガスの排出データを決める手法に最新の科学を反映させることで、透明性と報告プロセスを改善させる」と述べた。

2019/5/8 10:30
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44510120Y9A500C1MM0000/