所有者が不明な土地の活用制度を検討していた民間有識者の研究会(座長・増田寛也元総務相)は25日、最終報告を公表した。土地の放棄を希望する人と土地を活用したい人をマッチングしたり、当面は活用が見込めない土地を所有者に代わって管理したりする組織の設置を促した。提言を受け、国土交通省は2020年度に全国で土地の受け皿を育成するモデル事業を始める方針だ。

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都市部でも現在の所有者が把握できない物件がある

所有者不明の土地は16年時点で約410万ヘクタールと、九州本島の面積を上回るほどあるとされる。所有者の高齢化や相続人の不在などで土地の放棄を希望する人は増える傾向にある。適切な管理や活用対策を講じなければ、所有者が不明な土地は40年に北海道本島の面積に迫るとされ、17〜40年までの累積で経済損失は6兆円にのぼると研究会は試算する。

今回の提言は、今後、所有者が不明になる土地を増やさないための仕組み作りに力点を置いた。遠方に住む親から土地を相続したが手入れが難しい、といった土地の管理に乗り出し「不明土地予備軍」を抑制する。

具体的な対処は2つ。一つが土地を放棄したい所有者と、活用を望む事業者とのマッチングを通じた土地活用だ。NPOなど「公的色彩を持った機関」を業務の担い手として想定し、所有者から手数料を徴収して業務を機能させる。山形県鶴岡市などでは既に実績のある取り組みが進んでいる。

手数料だけで運営が難しいことも視野に、国交省はマッチング業務の担い手への助成金など支援の仕組みも検討する。土地の受け皿となる組織を育成し、課題を探るモデル事業を全国から数カ所選び、始める。20年度の概算要求で必要経費を計上する方針だ。

もう一つの仕組みは当面の活用が見込めない土地の管理だ。受け皿となる組織が所有者から手数料を受け取り、そのお金で土地の手入れや管理をする。地方自治体や国との間で受け入れの調整もする。

ただ、現実には調整しても活用が全く見込めない土地もある。その際は所有権を第三者に譲り渡さずに所有者自身が管理すべきだとした。例えば所有者が投機目的で購入した土地が大幅に値下がりしたようなケースで土地の放棄を認めれば、管理責任や税負担逃れに利用されかねないとの指摘があるためだ。

国交省は所有者には土地を適切に管理する責務があるとした上で、責務を果たさず周辺に悪影響が出ている場合に自治体などが対応しやすくするため、所有権を制限する方針も固めている。来年の通常国会に土地基本法改正案の提出を目指している。

2019/1/25 12:00
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40453710V20C19A1EA4000/