旭化成の小堀秀毅社長は23日までにインタビューに応じ、大型水素製造システムを早ければ2023年にも商業化する考えを明らかにした。太陽光などの再生可能エネルギー由来の電気で水を分解し、水素を得るシステムで、小型装置は他メーカーでも商業化されているが、大型は実証中の段階だ。

 水素は水を電気分解することで得られるが、その際に必要な電気がどう発電されるかによって、二酸化炭素の排出量が異なる。「水素をつくることだけが目的ではなく、再生可能エネルギーと連動させ、効率良くつくった水素をどう使うか」が鍵になると説明。水素は、公共バスや業務用トラックなど一定の場所で充填(じゅうてん)できる車両で使用される可能性が高いという。

 旭化成が目指すのは最大水電解能力が1万キロワット以上の大型機。現在日本とドイツで実証中だが、商業化は再生可能エネルギーへの転換政策を明示しているドイツの方が早くなる見込みで、地元企業と協力することになるだろうと語った。

 小堀社長は、M&A(企業の合併・買収)戦略については、15年にバッテリーセパレータメーカーの米ポリポア、今年は自動車内装材メーカーのセージと、大規模買収を実行してきたが、来年度から次期中期計画がスタートするためM&A資金がどこまで捻出できるか策定中だと説明した。

 マテリアル、住宅、ヘルスケアの3つの事業領域のうち次のM&Aの中心になるのはマテリアルとヘルスケアの部門になると指摘。「ヘルスケア部門では大きな買収案件はこれまでなく、第3の柱にしようとすればもう少し思い切った展開も必要かと思うが、ヘルスケア業界のM&Aは金額も高いので目的や双方の状況を精査しないといけない」と述べた。

 マテリアル部門の強化については「個々の事業を強くしていくのは当然だが、もう少し大きな塊で旭化成の特徴、強い分野をつくっていきたい」「自動車分野では、大手部品メーカーなどから旭化成はユニークな製品を持ち良い提案をしてくる会社だという位置付けをしっかり獲得したい。他にも幾つかそういったフィールドを旭化成グループの中でつくりたい」などと述べた。(ブルームバーグ Chisaki Watanabe)
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