東洋経済 online 2018年05月09日
https://toyokeizai.net/articles/-/218313


 最近、ニュースなどで「人口減少社会」というキーワードをよく見掛ける。

 実際に、日本は8年連続で人口減少が続いている。少子高齢化が叫ばれて久しいが、ここにきて、
「少子化=人口減少」が明らかに目に見える形で表れてきている。


縮小する経済、深刻化する供給過多

 今年3月30日、国立社会保障・人口問題研究所が衝撃のデータを発表した。2030年にはすべての都道府県で
人口が減少し、2045年までに日本の総人口は1億0642万人になると予想している。

 2015年の総人口が1億2709万人だったから、今後30年で2000万人以上減少することになる。とりわけ、
ひどい落ち込み方をするのは都市部より地方で3割減が当たり前と見込まれている。

 高齢化も確実に進む。65歳以上の人口比率は東京都や神奈川県といった首都圏でさえも、
現在の高齢者数に比べて1.3倍に増える。

 ちなみに、2045年以降も人口減少は続き、47年後の2065年には8808万人、65歳以上の老年人口比率は
38.4%となり、ほぼ4割が高齢者になる。

 生産年齢人口比率は51.4%に落ち込み、現在(2015年)の60.7%を大きく下回る。働ける人が
2人に1人の時代になりつつあるということだ。

 さて、こんな人口減少社会は日本にどんな影響をもたらすのだろうか。大きく分けて次のような項目が考えられる。


(中略)


デフレからの脱却への数少ない道

 ちなみに、日本の在留外国人数は2017年6月末の段階で中長期在留者数は213万人。特別永住者数などを
合わせると全部で247万人になる。この数字が多いか、少ないかは判断の分かれるところだが、
実際に日本で暮らす外国人はもっとはるかに多い印象がある。

 人口減少社会の解決法として最も近道といえば、言うまでもなく移民受け入れの増加だろう。
米国情報大手のブルームバーグは、日本が早期に外国人の人材を受け入れていれば、超大国に
なっていただろうとする社説を出したことがある。とりわけ、IT(情報技術)やAIなどの高度なスキルや才能を持つ
優秀な人材の獲得競争は、10年以上前から世界的に起きていたことであり、その流れに乗り遅れた日本は今後、
そのツケを払わなければならない。

 移民の受け入れは、治安悪化、賃金下降を招きデフレを強める、神社がモスクに変わったり、
日本の文化を守ることが難しくなったりする、といったデメリットがあることは間違いない。しかし、コンピューターなどの
才能や知識を持った高度人材を受け入れるためには、どうしても移民規制を緩和するしかないだろう。

 人口減少社会の影響は、確実にわれわれの生活を変化させている。街にあった学習塾やコンビニ、
ラーメン店が閉鎖され、代わりに有料老人ホームや高齢者向け業務サービスを届ける施設に代わっている。
人口減少社会の経済に対する検証を公平な立場から、より正確に精査すべき時期がきている。

 しかも、この少子高齢化は日本だけではなく、お隣の韓国や中国までもが抱える課題になりつつあるといわれる。
すでに外国から多数の移民を受け入れてきた欧米各国では解決済みの問題かもしれないが、国境に“高い壁”を
築いてきた日本にとって、まさにこれから解決しなければならない重大な課題と言っていいだろう。

 ひょっとしたら、人口減少社会の解決こそが、長年苦しんできたデフレからの脱却への数少ない道なのかもしれない。
アベノミクスや異次元の金融緩和では、デフレ脱却できない可能性が高いのだ。


(全文は記事元参照。全5ページ)