【シリコンバレー=兼松雄一郎】米アリゾナ州は米ライドシェア最大手ウーバーテクノロジーズの自動運転車が18日夜に同州で歩行者との死亡事故を起こしたのを受け、ウーバーへの実験許可を取り消した。「ウーバーの技術力に疑いが生じている」と指摘した。ウーバーの自動運転車は搭載されたセンサーやレーザーが正常に稼働していなかった疑いが強まっている。同社は全ての実験を既に中止しているが、再開までには長い時間がかかりそうだ。

事故が起きた夜間の暗い道路でも、通常の自動運転車ならばレーザーやセンサーが飛び出してきた歩行者を検知して少なくとも減速することはできる。ウーバーの車両にもこうした部品は搭載されていたが、衝突前に減速できなかった。

ウーバーの事故では、未熟なシステムを補うはずの運転席にいた監督者が事故前に前方に注意を払っていなかったことも問題視されている。ただ、一般的に運転の自動化が進むと運転席の監督者が集中力を保つのは難しい。実験中に視線を捕捉し、警告音や振動で注意を喚起するような仕組みを義務付けるなど、実験ルールの厳格化が今後進む可能性がある。

画像処理半導体大手の米エヌビディアはウーバーの死亡事故を受け同日、一時的に公道での実証実験を控えていると明らかにした。実験手順などを見直した上で再開するという。同社イベントに登壇したジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は「安全が最も重要だ」と強調した。ウーバーの事故後、トヨタ自動車も米国での実験を自粛していた。
2018/3/28 7:34
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28672310Y8A320C1000000/