企業が採用選考に人工知能(AI)を導入する機運が高まっているが、就職活動中の学生の過半数はAI選考に否定的であることが就職情報サイトのディスコ(東京・文京)の調査で分かった。採用現場で技術革新が進む一方、学生の意識とは温度差があるようだ。

ディスコは7日、2019年卒業予定の大学生・大学院生を対象とするモニター調査の結果を発表した。

 調査では、AIが(1)自分に合う企業をお勧めする、(2)書類選考の合否を判定する、(3)面接試験の合否を判定する――という3つの取り組みについて反応を聞いたところ、(2)、(3)では否定的な回答が過半数となった。

 中でもAIが面接試験の合否を判定することについては、「まったくよいと思わない」(33.0%)、「よいと思わない」(34.5%)を合わせると、7割近く(67.5%)が否定的だった。

 書類選考の合否の判定については、「まったくよいと思わない」(19.3%)、「よいと思わない」(30.8%)を合わせると、約半数(50.1%)が否定的だった。

 一方で、AIが自分に合う企業をお勧めしてくれることについては、「とてもよい」(25.2%)、「よい」(42.4%)を合わせて6割以上(67.6%)が肯定的だった。

 AI選考は、選考に関わる人や時間の効率化や、選考基準の公平性確保などの観点から導入の検討が進んでいる。

 現状では、AIに面接の合否の判定まで委ねている企業はほとんどないとみられる。ただ、学生が企業に提出する「エントリーシート」については、AIで模倣などをチェックするサービスが登場しており、大手企業でも導入する動きがある。AIに選考の一部を肩代わりさせる試みは今後も広がる気配だ。

 ディスコの武井房子上席研究員は「学生は、やはり人間の人事担当者に判断してもらいたいという思いが強い。人とAIとでは、落とされた時の納得感が大きく違うようだ」と分析。また、AIによる企業のお勧めについては「行きたい企業を決められずに悩む学生も多い。就活情報のナビサイトにも同様のお勧め機能があるが、より精度の高いマッチングに期待しているのではないか」と指摘している。

 調査は3月1〜6日にインターネットで実施し1258人から回答を得た。

 ディスコは同日、経団連加盟企業が採用広報を解禁した3月1日時点の内定率(速報値)が8.0%だったとする調査結果も発表した。17年の同時期に比べて2ポイント上昇しており、過去10年間で最も高い水準だった。

 学生優位の「売り手市場」と人手不足が相まって企業の採用意欲は強い。中小や外資系など経団連に加盟していない企業が採用活動を前倒しする動きが影響したようだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27805270X00C18A3XXA000/