東南アジア諸国連合(ASEAN)の自動車市場で、中国メーカーの躍進ぶりが目立つ。地元の有力企業と連携して拠点を設け、安さを売り物にシェアを拡大。環境規制を強化する流れの中、電気自動車(EV)なども切り札に、先行する日系メーカーに攻勢をかける構えだ。
〔写真特集〕東京モーターショー2017 コンパニオン

年間販売台数100万台超でASEAN最大の自動車市場インドネシア。昨年の国際自動車ショーでは中国の「五菱」ブランド車が注目を集めた。2017年の中国ブランド車の販売台数は5418台とまだ少ないが、前年に比べて約64倍に急増。日系メーカーは「今後人気が高まるようなら脅威になりうる」と気を引き締める。

五菱は西ジャワ州に工場を建設し、17年に多目的車(MPV)の量産を開始。価格を約1億3000万ルピア(約100万円)と競合車より2〜3割安く設定した。

タイでは、上海汽車集団が地元の有力財閥と合弁で、英MGブランド車を生産する新工場を建設。MGの新モデルを世界に初出荷した。

中国の浙江吉利控股集団はマレーシアで、国産車会社プロトン・ホールディングスに出資。傘下の吉利汽車の乗用車を生産し、プロトンブランドで販売する計画だ。

インドネシア市場の9割、タイ市場の8割など、東南アジアの新車販売で日系メーカーは圧倒的なシェアを誇る。現地に強固な部品供給網を築き、「地産地消」の生産・販売体制を取ってきた。

しかし、今後は充電設備の課題などを抱えつつも、EVシフトが強まる見込みで、東南アジアの勢力図が変わる可能性がある。EVはエンジンで走行する従来の自動車と部品の種類が異なり、各社に供給網の再構築などを迫るからだ。

こうした中、日系メーカーは従来車に関連する多数の下請け企業を抱え、「EVに思い切ってかじを切れない」(シンクタンク)との見方がある。対応が後手に回れば、これまでの強みが一転足かせになる恐れも出てきた。
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