関西電力は22日午前の臨時取締役会で、運転開始から40年近く経過した大飯原子力発電所1、2号機(福井県)を廃炉にすると正式に決めた。再稼働にかかる安全対策費が重く、採算が合わないと判断した。東京電力福島第1原発事故後、出力が30万〜50万キロワット台の小型原発の廃炉が相次いだが、大飯2基の出力はともに約118万キロワットで国内最大の廃炉となる。

岩根茂樹社長が同日、福井県庁を訪れ、西川一誠知事に2基の廃炉方針を説明した。岩根社長は「格納容器の安全対策を検討したが、有効な方法を見いだせず廃止することを判断した」と話した。西川知事は「安全最優先で進めてほしい」と述べた。

 関電は2018年以降に廃炉の具体的な計画をまとめ、原子力規制委員会に出す。廃炉作業には30年程度の長い年月がかかる。廃炉費用は現時点で約1160億円と見込む。

 福島事故後、原発の運転期間は原則40年と定められたが、規制委が認めれば、最長60年まで動かすことができる。大飯1号機は19年3月、同2号機は同12月に丸40年を迎える。1号機を運転延長する場合の申請期間は今月27日〜来年3月27日。申請前には、原子炉など重要設備が運転延長に耐えられるかどうかを数カ月間かけて確認する特別点検を行う必要があり、廃炉か運転延長かの判断期限が迫っていた。

 原発の再稼働に必要なコストは1基当たり約1千億円とされる。老朽原発の場合、燃えにくいケーブルに取り換えるなどの追加対策が重くなる。さらに大飯1、2号機の場合、原子炉格納容器が小さいなど特殊な構造のため、ほかの原発よりも対策費が膨らむ。大型原発であっても費用対効果が見合わないことから運転延長を断念した。

 福島の事故後、これまでに廃炉が決まっている原発は福島第1を除くと計6基。いずれも小型で、出力100万キロワット超の廃炉は福島第1の6号機を除けば初めてとなる。関電は原発を11基保有していたが、すでに美浜1、2号機の廃炉を決めており、今後は7基体制になる。

 岩根社長は「将来の発電電力量に占める原子力の割合を約4割にすることを目指す」と述べた。

 世耕弘成経済産業相は22日の閣議後の記者会見で「円滑に廃炉プロセス進めてほしい」と述べたうえで、30年度の電源構成(ベストミックス)目標は「達成がただちに困難になると考えていない」とした。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24951780S7A221C1MM0000/