0001ノチラ ★
2017/10/14(土) 05:53:39.77ID:CAP_USER給料が高くてもコストが高すぎると効率が悪くなる
内閣府がまとめた報告書によると、都道府県別の通勤コストがもっとも高かったのは神奈川県で年間97.7万円だった。もっとも安かった県は31.2万円だったので、神奈川県とは年間60万円の差がついている。
通勤費が100万円と聞くと、ちょっとびっくりしてしまうが、落ち着いて考えてみれば、実際の通勤費がここまで高額でないことは、自身の定期代などから想像できるだろう。
この調査は、通勤費を直接調べたものではなく、平均的な通勤時間に時給をかけてコストを算出し、さらに追加の住宅コスト(家賃が他と比べて高い部分の追加費用)を加えたもので、あくまで理論的な数値である。
通勤がなければその時間を仕事に費やすことができるので、もっと多くのお金を稼ぐことができる。つまり、通勤は一種の機会損失ということになるが、経済学的にはその金額を機会費用と呼ぶ。神奈川県民の(機会費用としての)通勤コストが100万円ということは、神奈川県民が現在の所得を得るためには、100万円の機会費用をかけなければならないという意味になる。
通勤に関する機会費用は、平均時給が高ければ高いほど、通勤時間が長いほど、多く算出されることになるので、通勤がどれだけの負担になっているのかを知る有益な指標であることは間違いない。
実際、総務省が行っている社会生活基本調査(2011年)では、神奈川県の平均通勤時間は1時間40分で全国トップだった。1人あたりの県民所得も292万円と比較的高い部類に入るので、両者を掛け合わせた理論的な通勤コストは当然のことながら高く計算される。
神奈川県に限らず、日本人の通勤時間が世界でも突出して長いことはよく知られている。日本人の平均的な通勤時間は米国や英国の2倍近くもあるが、これが生活全般を圧迫し、生産性にもマイナスの影響を与えているのは間違いない。
日本は土地が狭く人口密度が高いのでやむを得ないのだという意見もあるが、これは単なるイメージに過ぎない。算定の方法にもよるが、東京の人口密度は諸外国と比較して特別に高いわけではない。
人口密度はどの範囲で算定するのかで結果が大きく変わってくる。東京の人口密度が高いと算定されるのは、単純な行政区分での比較や、周辺都市を加えたケースがほとんどである。東京都心やロンドン中心部、マンハッタン、パリ市といった中枢エリアで比較した場合、東京の人口密度はパリやニューヨークの半分しかない。実際、パリやニューヨークの中心部には多数の市民が住んでいるが、東京都心の夜間人口は激減してしまう。
諸外国の例を見れば、長時間の通勤が人口密度の問題ではないことが分かるのだが、なぜ日本ではこのようなライフスタイルが定着してしまったのだろうか。様々な理由があるので単純化することは難しいが、日本の宅地開発のあり方が大きく影響していることは間違いない。
昭和の時代はまだ貧しく、経済全体として住宅の整備にかけられる余裕はあまりなかった。コストが圧倒的に安い郊外を中心に宅地開発をせざるを得なかったというのが実情だろう。鉄道を使って郊外の家から長距離通勤するというライフスタイルはこうして確立したのである。
本来であれば、生活水準がある程度、向上した段階で、都市部の住宅整備を進めるべきであった。だが、昭和型の低コストな宅地開発はその後も続き、都市部の住宅整備は一向に進まなかった。これが通勤時間が長くなってしまった最大の原因である。
このところ郊外から都市部に転居する人が増えているが、こうした動きは、通勤コストのムダが強く意識されてきた結果と考えられる。今後は人口減少が本格化することを考えると、都市部への人口シフトはさらに加速する可能性が高い。
通勤時間を生産的な業務に充当する効果は計り知れない
このところ働き方改革が社会的な課題となっているが、通勤時間の削減は、労働者の生産性を向上させる有力な手段となる。都市部における安価で良質な住宅の提供を促していけば、経済全体の生産性も大きく改善するはずだ。
http://www.newsweekjapan.jp/kaya/2017/10/post-39.php