米テスラの創業者、イーロン・マスク氏がオーストラリアの電力危機に介入していることで、石炭の将来を巡る意見の対立が広がっている。

マスク氏は石炭に前途はないと考えている。これに対し、豪政府は引き続き石炭を発電に必要な主要資源だとして推進。また、トランプ米大統領も「クリーンで美しい石炭」技術によって、米鉱業界の雇用を救済できると考えている。

マスク氏は今月の豪州訪問中にアデレードで記者団に対し、「石炭に長期的未来はない」と語った。

マスク氏はサウスオーストラリア州で停電が頻発する電力網を支えるため、世界最大のリチウムイオン蓄電池システムを建設する計画を発表。これに対し、豪議員からは反発の声が上がっている。フライデンバーグ・エネルギー相は、同州がクリーンエネルギー導入がうまくいっていないことを隠すために著名人を利用していると批判した。

ただ、豪州の大半の州はこうした見方に同調していない。マスク氏の発表から数時間後、サウスオーストラリア州に隣接するビクトリア州は新たな石炭火力発電所建設への道を閉ざす方針を示した。

豪州のエネルギー政策は論争を呼んでいる。国民の過半数が再生可能エネルギー電力の導入拡大を支持しており、電力料金の高騰抑制が政治的責任だとする政府方針と対立。現在、豪州の電力源の約76%を石炭火力発電所が占める。石炭火力発電所は割安な電力供給源ではあるものの、温室効果ガス排出削減の取り組みにはマイナスとなる。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-07-20/OTBT3N6S972901