学生時代から1000時間以上も英語を勉強してきたはずなのに、なぜ私たちは英会話が苦手なのか。コミュニケーション・アナリストの上野陽子さんは「英語に訳そうとする日本が難しすぎる」といいます。うまく英語を話す3つのポイントを解説します――。

誰もが「英語学習に費やしてきた1000時間」を生かす
日常的な英語を話せる程度に習得するまでに必要だとされる時間は、およそ2500〜3000時間と言われています。人にもよるので一概には言い切れませんが、この程度の時間が必要になるのは、英語を学んだ人たちなら誰でも実感できるでしょう。

学生時代から考えれば、多くの日本人がかなりの時間を英語に費やしているのはご存じの通りです。例えば中高で3年ずつ、その後も大学や教室などで最初の2年ほど英語を履修したと仮定してみましょう。学校によって違い時代によっても変わりますが、文部科学省の学習指導要綱を目安におよそ平均的な数字をざっくりと計算してみると、こんな風になります。

中学……年140時間×3年=420時間
高校……年210時間×3年=630時間
大学……週90分×2コマ×4週×9カ月=6480分=108時間

420+630+108=1158時間。ここから、私たちは学校で1000時間以上は英語を勉強していることがわかります。さらに家庭学習や入試の勉強、塾や英会話学校の時間を含めると、学生時代だけで1500時間ほどは学習をしてきた人も多そうです。

英語に訳すための思考回路
もちろん、英語のまま考えて話すのが一番いいのですが、そうなるまでにはかなりの慣れが必要です。そのため、誰でも最初は日本語から訳すことからになります。考え方のポイントは次の3つ。

<英語に訳すポイント>
(1)日本語をできるだけ簡単にする
(2)結論を決める
(3)日本語の並びを、「なにが」「どうした」と英語の型に合わせる。

日常的に使っている日本語は、どうしても語彙が豊富。何よりも“慣れ”があります。そのため、訳そうとする日本語のレベルが高くて、自分の英語のレベルでは訳せなくなってしまいます。

例えば、最近よく聞かれる政治家の「忖度」(そんたく)という言葉があります。これは「人の気持ちを考える」「行間を読む」など、さまざまなニュアンスを含みすぎて、英語に訳すのは文脈次第になってきます。

行間を読むならreading between linesだし、推測するならsurmise、気持ちを汲むならreading what someone is implying……。しかし、こんな表現はそう簡単には浮かびません。言葉につまるよりも、「〜だろうなと思う」と平易な日本語にしてしまえば、supposeやguessが思い浮かぶでしょう。

このように、まずは日本語をできるだけ平易なものにすることが、英語につまずかないコツなのです。これなら、学校で習ったレベルの英語で十分に対応できるはず。

さらに英語では、まず「結論」を伝えることが必要になります。拙著「mini版 1週間で英語がどんどん話せるようになる26ルール」(アスコム)に詳しく著していますが、英語で話すときに、最初に頭の中ですることは、「主語」(何が・誰が)+「結論」(どうした)を決めることです。
以下ソース
http://president.jp/articles/-/22282