事業としての魅力はもちろん、その働きやすさについても常に注目され、「働きたい会社」としても、世界的な人気企業になっているグーグル。

 どうしてグーグルが働く場所として高い評価を得ているのか。ビリヤード台や卓球台、防音の音楽ルームやお洒落なライブラリー、「竹ガーデン」などがある独創的なオフィス環境や、1日3食社員食堂で無料で食べられるなど、福利厚生はよく語られる。

中略

 今、日本では「働き方改革」が話題になっており、長時間労働対策が問題になっているが、グーグルではどうしているのか、聞いてみた。

「まず、グーグルがメッセージしているのは、野心的で面白く興味深いゴールや目標に取り組んでほしい、ということです。ただし、それをどこでどのようにやるのか、はまったく問いません。ただし、長時間労働を勧めたりするメッセージはまったくしていません。そういう様子が見られたら、サポートが必要という信号ですから、本人と話をしてリソースが必要か、バランスを変えたほうがいいのではないか、などコミュニケーションします」

 実際の現場でも、長時間働くことはまったくリスペクトされないのだという。長く働くことがカッコイイことだと誰も思っていないし、周囲からの評価もされない。営業時間外のメールすら、好まれない。受け取ると返信をしてしまうから、仕事スイッチが連鎖してしまうからだ。営業時間内に仕事ができるよう、タイムマネジメントすることが求められる。

 しかし、野心的な目標を掲げているほどだ。無理をしてしまう社員は出てこないのか。

「これも自立性と関わってきますが、自分の人生や生活に対して、仕事をどうコントロールしていくか、という意識は極めて重要です。健康的な形で、どう仕事を推し進めていくか。そこは自分で考える必要がある。実際、どうやろうといいんです。自分の調子のいいときに長く働いて、翌日は早く帰る、というのもいい。自宅で仕事をしたほうが良ければそうすればいい。仕事ツールはたくさんありますので、まったくの自由裁量です」

 実際には、グーグルに転職した社員に聞くと、仕事の密度は相当なものだという。もちろんオープンで仕事がしやすく、ツールが充実していることもあるが、1週間分の仕事を1日でやっている感覚すらある、らしい。だが、これもブッキングのしやすさのように、密度高く仕事ができる環境が揃っているから、ともいえる。

 一方で、エンパワーメント&インディペンデンスだけに、働き方は極めてフレキシブルだ。例えば、エアコンが壊れて修理業者が来るので明日は自宅で仕事をする、などというのは、普通にできること。仕事がどこでもできるなら、だ。

 また、それぞれの仕事はそれぞれが管理しているので、「朝、急に子どもが熱を出したので家で仕事をすることになりました」となったとき、周囲で「えーっ!」などと声が上がることもないという。共同責任ではないので、誰かが困ったり割を食うようなことはないからだ。だから、職場もギスギスした雰囲気はまるでない。

「定期的に在宅で仕事をしている人もいますが、やはりグループで物事を動かしていくほうが仕事はスムーズですから、基本は職場に来て仕事をします。ただし、それは自分で決めること。会社が考えているのは、男女問わず、いい結果を出していくためにコンフリクトを起こしたり、障害になっているさまざまなことや日常的に困っていることを、どんどん取り除いていこう、ということです。もっと仕事がしやすくなるには、どうすればいいか、まだまだいろんなことができると考えています」

 それこそ人事も野心的な目標に取り組んでいる、ということ。はっきりとしたミッションがあり、オープンに情報にアクセスでき、自分で組み立てていける仕事環境が作られている。こういうところに魅力を感じる人には、心地いいということになるのだろう。
http://next.rikunabi.com/journal/entry/20170530_C