経営再建中の東芝が進める半導体メモリー事業の入札に、政府系ファンドの産業革新機構が米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と共同で参加する見通しになった。技術の国外流出を懸念する政府の意向を受け、最高買収額を提示しているとみられる台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に対抗する狙いがあり、2陣営の対決構図が強まりつつある。【古屋敷尚子、安藤大介】

 3月末に締め切った1次入札では、東芝と四日市工場(三重県四日市市)を共同運営する米ウエスタン・デジタル(WD)▽韓国の半導体大手SKハイニックス▽台湾の電子機器受託製造大手、鴻海精密工業▽米半導体大手ブロードコム−−の4陣営が有力とされていた。

 鴻海は最高額の3兆円を提示したとみられるが、日本政府は軍事転用ができる半導体技術が中国などに流出することを強く懸念しており、海外企業の出資を審査する外為法で買収にストップをかける用意もある。

 革新機構は政府のこうした意向を受け、5月に実施される2次入札に参加する方針を決めた。革新機構は日本企業による技術革新を支援することが任務。このため政府は当初、日本企業主体の買収を模索したが、企業は巨額投資に慎重で、苦肉の策で革新機構主体で応札する。

 しかし、政府が出資する革新機構が巨額資金を投じて東芝を「救済」する形になれば、革新機構の本来の目的から外れているとの批判が高まりそうだ。

 鴻海は政府の懸念を薄めるため、米アップルやシャープにも参加を要請し、日米台連合での買収を目指す。実現に懐疑的な見方がある一方、「最高額を示す鴻海を選ばなければ株主に説明できない」(関係者)といった声もある。

 一方、買収企業が同業他社である場合は、各国当局の独占禁止法の審査対象になる。SKハイニックスが選ばれれば、審査に時間がかかることも予想される。

 東芝が上場廃止を避けるためには、来年3月末までに半導体メモリー事業を売却し、負債が資産を上回る債務超過を解消する必要がある。6月の株主総会までに売却先を選びたい考えで、各陣営の攻防は山場を迎えている。

毎日新聞 4/28(金) 7:15配信
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