※1/6(土) 11:31配信
ナショナル ジオグラフィック日本版

塩水やレモン果汁、酢に浸したりゆすいだりしても同様

 生肉を洗うという行為に対する専門家の見解は明確だ――肉を洗ってはいけない。肉を洗うと、食中毒のリスクが減るどころか、サルモネラやカンピロバクターなど病原菌が台所のあちこちに飛び散るリスクが高まるからだ。

肉を洗う効果とは?

「調理する前に肉を洗っても、メリットはほぼありません」と話すのは、米パデュー大学食品科学准教授のベティ・フェン氏だ。「水しぶきが飛んで、流し台やその周囲、衣服などあらゆるものに二次感染をもたらすだけです」

 蛇口から水を流しながら肉を洗うと、汚染された水しぶきから病原菌が拡散する。これは、実際に研究で確認された事実だ。「細菌はジャンプも移動もできないのですが」と米ドレクセル大学栄養科学教授のジェニファー・クインラン氏は言う。「私たちが水をかけることで、細菌は移動手段を得るのです」

 2022年に発表された実験結果では、水を張ったボウルに肉を浸すと水しぶきは減少したが、細菌の拡散を抑えることはできなかった。実験参加者が行う調理を観察したところ、鶏肉を洗ったか洗わなかったかに関わらず、周囲のカウンタートップ(天板)よりもシンクに高レベルの大腸菌が確認された。だが、鶏肉を洗ったグループのほうが大腸菌の濃度は高かった。

「シンクの内側全体が鶏肉の表面と同程度に汚染されていると考えるべきでしょう。これは、バイオハザードです」。論文の著者の1人で米ノースカロライナ州立大学農業・人間科学部の准教授であるベンジャミン・チャップマン氏はこう話す。

 一部の文化では、調理前の肉を塩水や酸性の液体(レモン果汁や酢など)に浸したりゆすいだりすることが、一般的な「洗浄」方法とされている。

 例えば、ドミニカ系米国人のシェフであるネルソン・ジャーマン氏は、「ポジョギサード」(ドミニカ風鶏肉トマト煮込み)を作る際に、鶏肉を水で洗うだけではなく、ひと手間を加えるのが伝統だという。「ビターオレンジやサワーオレンジ、レモン、ライムなどを鶏肉全体にすり込むのです」

 この処理は鶏肉の汚染を取り除いて風味を高めるとされているが、半分だけ正しい。フェン氏は、塩水や酢、レモン果汁を使用しても食品媒介性の病原菌を死滅させるだけの効果はない、とクギを刺す。「細菌を死滅させるほど酸性が強ければ、素手で肉を洗うことはできないはずです」

 結局のところ、リスクを冒してまで生肉を洗う意味はない、という専門家の見解には揺るぎがない。

続きは↓
https://news.yahoo.co.jp/articles/3d7f864727009b254569ce9a275ba8eed883ac71