北海道浦幌町にある約6000万年前の新生代の地層から、深海性の二枚貝・タテヒダシャクシガイ属の新種が発見された。採集したのは帯広市のアマチュア化石収集家、井上清和さん(61)で、学名は「ミオネラ・イノウエイ」、和名は「イノウエタテヒダシャクシ」と命名された。タテヒダシャクシガイ属として世界最古の化石だという。


 新種と鑑定したのは、上越教育大の天野和孝特任教授(古生物学)。新潟大の栗田裕司准教授(同)らと調査を進め、4月に米国の貝類学雑誌「ノーチラス」に論文発表した。

 天野教授によると、タテヒダシャクシガイ属の化石は世界的に少なく、1959年に発表された富山県産出の約1700万年前の化石が最も古いとされてきた。今回の新種はこれを約4300万年もさかのぼる記録になり、天野教授は「深海生物の起源や進化を考える上で重要な画期的発見だ」と評価する。

 しゃもじのような形をした二枚貝は、長さが最大8・8ミリ。同属では太い縦じわが2本あるとされているが、新種には1本しかないのが特徴だという。

 井上さんは30年前から会社勤めの傍ら、十勝地方で化石収集を続けてきた。2010年11月、浦幌町北部の浦幌川支流沿いで、表面に貝の化石が浮き出た石灰質の塊を発見。割ると貝類が密集して入っていたため、旧知の天野教授に調査を託していた。

 発見現場の川流布地区の近くの地層からは、過去にも世界最古の貝類が5種類見つかっており、井上さんは何度も足を運んでいたという。8日に町立博物館で記者会見した井上さんは「最古の化石と聞いて驚いた。特に和名に自分の名前が付いたことがうれしい」と笑顔で話した。

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毎日新聞
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