人類は習慣や伝統を何世代にもわたって伝えることで、地域に密着した文化を形成する特徴を持っています。
ロンドン大学クイーン・メアリーの心理学者であるロバート・ラクラン氏らの研究チームによると、
ヌマウタスズメにも人間と同様の傾向があり、
ヌマウタスズメのさえずりは何百年にもわたって伝承されていることが明らかになっています。

Cultural conformity generates extremely stable traditions in bird song | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-018-04728-1

Birds Have Time-Honored Traditions Too | Duke Today
https://today.duke.edu/2018/06/birds-have-time-honored-traditions-too

研究チームはニューヨーク州に住むヌマウタスズメが3拍子の歌を繰り返して歌い、
ミネソタ州では4拍子の歌を好むなど、地域によって異なる歌を歌う傾向があることに気づいたそうです。
そこで、ラクラン氏らは「若いヌマウタスズメは先輩の歌を学びとって、歌っているのかもしれない」と考えるようになり、
本当に歌が伝承されているのか調査を行うことにしました。

研究チームはこの仮説を検証するため、ニューヨーク州、ペンシルバニア州、ミシガン州、
ウィスコンシン州に生息するオスのヌマウタスズメ615羽分の歌を録音し、ソフトウェアによる解析を行いました。


解析の結果、ヌマウタスズメは1羽あたり最大で5種類ほどの歌を歌えることが判明。
続いて、研究チームは若いヌマウタスズメがどのようにして曲を学習するのかを調べるため、
近似ベイズ計算を使用したシミュレーションモデルを作り上げます。
そして「単に気に入った曲を学習する」や「父親や特定の鳥が歌う歌を好む」など、
さまざまな仮説をこのモデルに適用して、最も妥当性の高い「歌の学習法」を調査を行いました。

調査の結果、研究チームは若いヌマウタスズメが別の個体が歌っている曲をランダムに学習するわけではなく、
人気のある曲を学んでいることを発見しました。
また、ヌマウタスズメは元の歌を98%以上の精度で正確に学び取ることもわかっており、
歌によっては500年以上にわたって受け継がれるている可能性が示唆されています。

デューク大学で生物学の教授を務めるステファン・ノーウィッキ氏は
「人類が持つ伝統文化は、人の持つ高い認知能力によって維持されてきました。
しかし、この研究では『ただ人気の歌を覚えて歌うだけ』という単純なルールであっても、
人間の伝統文化と同じように歌を長期にわたって維持できることが示されました」と語っています。

https://i.gzn.jp/img/2018/06/21/birds-time-honored-traditions/00_m.jpg

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180621-birds-time-honored-traditions/