時計2018/1/25 15:00神戸新聞NEXT

(写真)
コンプレッサーから噴射される空気で、タマネギはあっという間につるつるになる=南あわじ市内


 昨年11月に兵庫県の淡路島で発覚した贈収賄事件で、思わぬ賄賂が注目を集めた。空気を圧縮して送り出す「エアコンプレッサー」。
タイヤの空気入れや高圧洗浄に使われるのが一般的だが、淡路島ではタマネギの皮むきで活躍しているという。
島では皮むきで生計を立てる人たちを「むきタマ業者」と呼び、淡路産のほか、なぜか北海道産や海外産も手掛けているらしい。
調べると、全国3位の出荷量を誇るタマネギ名産地の知られざる姿が見えてきた。(鈴木雅之、高田康夫)

 左手には上下をカットして薄皮に切れ込みを入れたタマネギ。右手にはコンプレッサーのピストル形噴射器。
「プシュッ」。空気を吹き付けると、茶色い皮がはがれ、つるつるの「むきタマ」が出来上がった。

 「阪神・淡路大震災で瓦の仕事がだめになり、これしかなかった」。作業の合間に、南あわじ市の70代男性が教えてくれた。

 日本三大瓦の一つ、淡路島の「いぶし瓦」業界は震災後、「重い瓦で家が倒れた」との誤解が広がり、廃業者が続出。
瓦の汚れ落とし用だったコンプレッサーで、むきタマ業に転じた瓦業者は少なくないという。

 「淡路島ならではの業態ですね」。淡路玉葱(たまねぎ)商業協同組合(南あわじ市)に尋ねると、そう答えが返ってきた。
業者は島で軽く100軒を超えるが、加工会社との直接取引で組合もないため、正確な数は把握できていないという。

 納品されたむきタマは、そのまま出荷されたり、みじん切りやパウダーにされたりして全国の食品メーカーなどへ。
ブランド化された淡路産は値が張るため、加工用には北海道産や海外産がよく使われる。
つまり国内外の加工用タマネギが皮むきのため、淡路島に集められるということだ。

 「京阪神に出回る海外産の加工タマネギは、大半が淡路島を介して流通している。特産地で知られる北海道や佐賀県の業者へ、
皮むきして送り返す仕事も結構ありますよ」と同組合。

 正確な統計の裏付けはないが、神戸港がタマネギ輸入で全国2位を誇るのは、淡路島が近いことも要因とみられる。
もちろん、農林水産省が発表する淡路島の「出荷量全国3位」の数字には、島外産を皮むきした数は含んでいない。

 ■手作業が魅力

 では、なぜ皮をむくのに淡路が選ばれるのか。その理由が、全国で珍しい「コンプレッサーを使った手作業」にあるというのだ。

 自動皮むき機を導入している工場は全国にあるが、タマネギの大きさはまちまち。
皮むきする際に捨てる割合(廃棄率)が、機械だと一つ当たり15〜20%に上るのに対し、
ナイフで必要最低限だけカットし、コンプレッサーで薄皮のみをはがす淡路島のむきタマ業者なら7〜8%という。

 さらに、廃棄物の処理価格は都市部で1キロ40円程度だが、淡路島は15円程度。
加工を発注するメーカー側にとって、廃棄率と処分費用が抑えられる淡路島のむきタマは魅力的なのだ。

     ===== 後略 =====
全文は下記URLで

 https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201801/0010927893.shtml