中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は14日、2021年度の最低賃金を全国平均で28円を目安に引き上げ、時給930円とすると決めた。28円の引き上げ額は02年度に時給で示す現在の方式となってから過去最大で、上げ幅は約3%だった。新型コロナウイルス感染拡大前の水準が回復する。実現すれば全都道府県で初めて800円を超える。

最低賃金は企業が労働者に支払わないといけない最低限の時給で、違反した企業には罰則もある。現在の全国平均は902円。毎年、国の審議会が全都道府県を物価や経済状況に応じてA〜Dランクに分けて引き上げ目安を示し、これを基に各地域の審議会が実際の金額を決める。10月ごろに新たな最低賃金が適用される。

今回、小委員会は全てのランクを28円としランクごとの差を設けなかった。現在の最高額である東京は1013円、最低額である秋田や高知などは792円で221円の差がある。過去の引き上げで都市部と地方の格差が広がっていたが、最近は最低賃金の低い県が目安を上回る水準で引き上げる傾向が目立っていた。

第2次安倍政権は年3%の引き上げ目標を掲げ、実際に16〜19年度は約3%ずつ大幅に引き上げた。20年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を考慮して国の審議会が11年ぶりに引き上げ目安を示せなかった。結果的に各都道府県の引き上げは、全国平均で0.1%(1円)増にとどまった。今年度はワクチン接種などが進み、新型コロナの影響をどう捉えるかで労使の意見が対立した。

政府は6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、最低賃金について「感染症拡大前に引き上げてきた実績を踏まえ、より早期に全国平均1000円をめざす」と記した。中小企業の団体など経済界は現状維持を訴えたが、結果的には政権の意向通りに決着した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA136230T10C21A7000000/