世界各国の政府が脱炭素化にかじを切るなか、自動車メーカーの電動化をめぐる競争が激化している。特に電気自動車(EV)は欧米や中国勢が注力するほか、アップルなど異業種の参入の動きも出てくるなど、電動車の主役として期待が急上昇している。ハイブリッド車(HV)を中期的に電動車の中心に据える日本勢はEVでは後れをとっており、このままでは競争から脱落するリスクも懸念される。

 トヨタ自動車は10日、2025年までに米新車販売の4割を電動化する目標を示した。年内にEV2車種とプラグインハイブリッド車(PHV)1車種を発表する計画だ。

 「25年近く前に(HVの)プリウスを世界に先駆けて投入した。私たちは、引き続き電動化のリーダーであり続ける」。トヨタ北米法人のカーター上級副社長は声明でこう述べた。

 米国での電動化目標を示し、車種を拡充させた背景には、脱炭素社会への転換を掲げるバイデン政権の発足がある。

 トヨタは、国・地域のエネルギー事情などに応じた全方位型の電動化戦略を採用。25年までに世界で販売する新車の550万台以上を電動車にする計画だ。内訳は450万台以上がHV。残りの100万台以上はEVと、水素で走る燃料電池車(FCV)だ。

 EVは20年代前半に10車種以上をそろえる計画だが、米ゼネラル・モーターズ(GM)は25年までに30車種のEVを投入する方針だ。35年までには新車を全面的に電動化させ、HVも造らないなど二酸化炭素(CO2)排出削減を徹底する。

 独フォルクスワーゲン(VW)は新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受け、20年は世界販売台数の首位の座をトヨタに奪われたものの、EV販売は前年の3・1倍の23万1600台に増えた。VWのお膝元・欧州では環境規制強化を背景にEV普及が進む。17日には、米フォード・モーターが欧州で展開する乗用車を30年までに全てEVにすると発表した。

 世界のEV市場は補助金制度などを追い風に急成長し、35年にHVの約3倍になるとの試算もある。しかし、日本自動車工業会の会長も務めるトヨタの豊田章男社長は昨年12月の記者会見で、急速的なEV普及が日本にもたらす弊害を訴えた。CO2を大量に排出する火力発電が全発電量の電源の7割超を占める状況を念頭に「EVを造るほどCO2が増える」と指摘。「日本が全てEVになると、夏場のピーク時に電力不足になる」との懸念も示した。
https://www.sankei.com/economy/news/210220/ecn2102200003-n1.html