今回、経営共創基盤代表取締役CEO(最高経営責任者)として様々な企業の再生や成長支援に取り組む日本を代表する経営コンサルタントで、新著『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』を上梓したばかりの冨山和彦氏と、新作小説『よこどり 小説メガバンク人事抗争』でメガバンクの未来や組織の在りようなどを独自の視点で描き出した作家の小野一起氏が緊急対談を敢行。日本企業に蔓延する「偉い人たちのおかしさ」について語り尽くした。

「時代劇化」した日本企業
 小野 日本的経営での成功体験がアダになって、バブル崩壊とともに経営危機が顕在化した代表例がカネボウやダイエーですね。冨山さんは、政府系の産業再生機構のCOO(最高執行責任者)として、日本的な経営の無残な失敗とリアルに向き合うことになりました。

 冨山 特にカネボウは最も強固な日本的経営の会社で、日本的経営をつくった原型のひとつでもあるわけです。運命共同体みたいに日本型経営を信じていたので、新しい時代には不適合な会社だったわけです。

 しかし、もっとも強烈に変革の波にさらされたのは三種の神器(白黒テレビ、冷蔵庫、洗濯機)や3C(自動車、カラーテレビ、クーラー)でかつて成功体験を味わったエレクトロニクス産業でしょう。半導体で日本が世界を席巻したのも成功体験になっていると思いますが、せいぜい1990年代の話です。もう時代劇の世界ですよ。

 小野 そうした危機に直面したエレクトロニクス産業の中には変革の波に乗れないところも出てきていますが、一方、日立製作所などは中西宏明会長らのイニシアディブで強烈な改革が始まっていますね。中西さんは冨山さんとの共著『社長の条件』の中で日立の人事改革に言及されていますが、典型的な日本的大企業と思われていた日立で大胆な組織改革がここまで進んでいたのかと驚きました。

 グローバル化に対応するために年功序列を廃止し、トップの選定も社外取締役が主導して、30代を含む50人近い候補者とやり取りしながら選定作業をしているという話は刺激的でした。

 逆に言えば、日立のような企業でもこのくらいの改革に取り組まなければ生き残れないということですね。

社長が「次の社長」を決めるというムラ社会
冨山 遅ればせながら、だと思います。こうした日本的経営の問題点については気づく人は気づき、分かっている人は分かっていました。たとえばスタンフォード大学名誉教授の故・青木昌彦さんは、以前から課題を指摘していた。それなのに、たとえばカネボウの経営が傾いたときなど、日本の経済界では「あれは変な経営者がいたからだ」と説明してしまう人が大半だったんです。

 小野 日本的な経営が構造的な問題を抱えているとは考えずに、カネボウが個別に経営問題を抱えていると説明されてしまった。

 冨山 日本的経営の普遍的な病理について経済界全体が認め始めたのは、本当にごく最近のことです。安倍晋三政権になってからようやく企業統治(コーポレート・ガバナンス)改革が本格的に始まりましたが、それまではすべて人のせいにしていた。

 そもそも日本企業の低迷は、世界の時価総額ランキングをみると明らかです。平成元年はかなりの数の日本企業が上位50社に入っていました。でも平成の終わりには、せいぜいトヨタ自動車ぐらいじゃないですか。この平成の大敗北で、さすがに自覚が生まれた。
以下ソース
https://news.yahoo.co.jp/articles/9c57b34086a023664d9cc03c30b3a2eba0a168ee