空室が出ると分かれば借り増したい企業が少なくなかったが、こうした動きも影を潜める。
名刺管理サービスのSansanは「積極的な人材採用を進める」ため本社を構える渋谷区内で
オフィスを拡張する計画だった。ところが「採用計画を含む投下コストの最適化を進める」
として、入居せずに解約を決めた。

空室率の上昇は賃料の下落圧力を強める。三鬼商事によれば、募集賃料は渋谷区が3.3平方
メートルあたり2万5075円となり、5区で最も高い。ただ、直近の最高値となった4月の
2万5531万円から2カ月連続で下がっている。5区は2万2880円で小幅ながらも上昇を続けて
いるのと対照的だ。

CBREが査定した想定成約賃料で比べても、4〜6月の「渋谷・恵比寿」は3.3平方メートル
あたり2万7170円で前期比0.6%下がった。都内で最も高額な「丸の内・大手町」は0.1%の
下落にとどまり、大規模再開発が続く「虎ノ門・汐留」は0.3%上昇している。

働き方の見直しが進み、企業にとって適正なオフィスの立地やスペースを探る取り組みは
加速する。しかし、企業が結論を出すには時間もかかる。過熱気味にもみえた渋谷区の
オフィス市況の異変ぶりは、今後、押し寄せてくる変化の波頭となっているのかもしれない。