緊急事態宣言の解除後もテレワークを社内制度として継続する企業が相次いでいる。象徴的なのが富士通だ。2020年7月6日、国内グループの社員約8万人の勤務形態を基本としてテレワークにする方針を発表した。

 一般にテレワークの推進は歓迎すべきだと思うが、懸念もある。それはテレワークによって雑談が減ることだ。

 記者は2020年春、ITベンダーのマネジャーやリーダークラス約10人にテレワークでのチームマネジメントについて取材した。その際、マネジャーやリーダーたちは異口同音に「テレワークでは何も手を打たないと雑談が生まれない」と訴えた。

 雑談がなくなるのは、テレワークを実施する多くの読者が実感しているのではないか。Web会議やテキストチャットなどのコラボレーションツールがあっても、それらは基本的に報告・連絡・相談の用件があったときに使う。雑談のためにわざわざWeb会議で誰かを呼び出したり、テキストチャットでメッセージを送ったりするのは気が引けるものだ。

 テレワークでも報告・連絡・相談のついでに雑談をする機会はあるが、なかなか機能しない。事前に相手の様子が分からないこともあり、報告・連絡・相談ですら仕事の邪魔にならないように配慮して簡潔に済ませようとするからだ。

 「テレワークではコミュニケーションが淡泊になる」。こう表現した開発チームのリーダーもいた。一人ひとりが必要最小限の情報だけを他のメンバーとやり取りし、黙々と自分の担当タスクに集中するとの意味だ。

アイデアの醸成に雑談は不可欠
 ここで「担当タスクに集中する」のは良いことだと思うかもしれない。実際にテレワークの利点として生産性向上を挙げるリーダーもいた。通勤時間が不要になることに加え、雑談が減ることもその要因の1つだろう。

 しかしITの現場の仕事は決められた作業だけではない。むしろ中心となるのは、システムや開発・運用の方法を日々改善するという創造的な仕事だ。その際に重要なのは改善のアイデアである。チーム内で「システム基盤をこう変えた方がいい」「ユーザーヒアリングの方法を変更しよう」といった改善のアイデアを出し合い、トライ・アンド・エラーを繰り返す。そのアイデアの醸成に雑談が欠かせない。
以下ソース
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/070700583/