「ゼン2」コアを搭載した「ライゼン3000」シリーズ。製造プロセスが微細化したことにより省電力化を実現。動作周波数の向上や3次キャッシュメモリーの倍増などに加え、現在最強といわれる分岐予測技術「TAGE(テイジ)」を採用している

パソコンのCPU(中央演算処理装置)といえばインテル──そんな常識が覆されるかもしれない。2018年からインテル製CPUの供給不足が続いていることもあり、「ライゼン(Ryzen)」などの米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)製CPUがシェアを拡大中。その勢いに乗るかのようなタイミングで7月、AMDは第3世代ライゼンの販売を開始した。7ナノメートル製造プロセス[注]の新アーキテクチャー「ゼン(Zen)2」を採用した新CPUだ。対するインテルは、やっと10ナノメートル製造プロセスのCPUを出荷し始めたばかり。AMDが技術面で一歩先んじた形になる。

今回投入されたのは、デスクトップパソコン向けのライゼン9/7/5。AMDによると、浮動小数点演算性能が従来世代の2倍になり、クロック当たりの命令実行効率(IPC)が最大15%向上したという。編集部でのテスト結果もそれを裏付けた。注目はシングルコアの性能。従来のAMD製CPUは浮動小数点演算性能が低く、シングルコアでのスコアが大きく劣っていたが、新CPUで大幅に改善。これは長年にわたるインテル製CPUの優位性がなくなったことを意味する。

前世代の2倍の帯域を持つ最新インターフェース「PCI Express 4.0」をサポートした点も見逃せない。同時に発表された「X570」チップセット搭載マザーボードで利用できる。インテル製CPUではまだ対応できておらず、最新技術の導入においても、AMDが一歩リードした。

ノートパソコン向けのゼン2コアCPUも近々登場予定。性能と機能でインテルをしのぐAMDが、CPU勢力図を塗り替えることも夢ではなさそうだ。

[注]CPUの「製造プロセス」は回路の微細さを表し、「プロセスルール」とも呼ばれる。回路の配線の幅を示す数値を「nm」(ナノメートル、ナノは10億分の1)で示す。この数値が小さいほど半導体本体(ダイ)が小さくなり、より多くの機能が盛り込める。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO49451430V00C19A9000000/