自動運転車の実用化に向けた各国間のレースでは、公道での走行試験を法律で認める韓国やシンガポールなどのアジア勢が優位なポジションを築きつつある。また、中国もそれほど後れを取っていない。

ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス(BNEF)のアナリスト、アレハンドロ・ザモラノ氏(サンフランシスコ在勤)はリポートで、異なる文化・政治システムが法律の差別化に寄与し、アジア諸国は全般的に自動運転車の公道走行許可に極めて積極的だと語った。一方、米国では「まだら模様の各州のルール」を統一する国の法律がなく、これが自動運転車の導入を妨げているという。

BNEFによると、2020年までに自動運転車の販売を計画する韓国は「寡黙なリーダー」だ。韓国は320キロメートルの公道で走行試験を可能にしたほか、ソウルの南に位置する華城市に今年オープンする試験サーキットの建設を支援している。現代自動車やサムスングループ、フォルクスワーゲン・グループ、ソウル大学校など、40台余りが公道で試験走行を行っている。

シンガポールは渋滞問題の緩和に向けて迅速に戦略を実行。公道での試験走行を15年に始めた同国は、自動運転バスの導入計画に向け前進している。今後10年で一定レベルの自動運転車両3000万台の導入を目指す中国は、国内の半導体産業を刺激し、百度(バイドゥ)には自動運転プラットフォーム「アポロ(阿波羅)」の開発を促す。

一方、北米で試験走行を許可しているのは米国で17州、カナダ2州にすぎない。ザモラノ氏は「米国とカナダは基本的に連邦政府と州で管轄権を分け合っている」と述べた上で、「どこが何を許可するのかが明確ではないため、自動運転車をテストする上で実に有害だ」と語った。

BNEFでは、米上院で審議されている「自動運転車両スタート・アクト」法案の可決が、州境をまたぐ道路での試験走行を促すとみる。現在米国では18州で自動運転に関わる法律がない。

欧州ではドイツと英国がアジアと同様に優位なポジションを築いているが、ドイツよりも英国が試験走行のための環境整備で先行している。ドイツは他国のために枠組みを構築した可能性がある。この枠組みでは、運転手がハンドルを離した状態での走行を認める一方、システム上の問題で事故が発生した場合は自動車メーカーが責任を負う。ドイツはまた、自動車運転ソフトウエアに動物やモノよりも人間の生命を優先することを求める倫理規則を備えている。(ブルームバーグ Ma Jie、David Welch)
2018.5.26 06:01
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180526/mcb1805260500012-n1.htm