リージョナルジェット機最大手エンブラエルが好調だ。次世代機E190-E2の燃費が当初計画よりも1.3%良好で、現行機E190と比べて17.3%改善すると、飛行試験の結果を基にアピール。自社による販売が好調なことに加え、2017年12月にはボーイングとの提携交渉を公表しており、強固な販売網やサポート体制を築きつつある。

 E190-E2をはじめとする「E2シリーズ」のエンジンは、三菱航空機が開発を進める「MRJ」と同じく、低燃費と低騒音を特徴とする米プラット・アンド・ホイットニー(PW)製GTFエンジンを採用している。開発スタートはMRJの2008年に対し、E2は2013年と出遅れたが、納期を5回延期したMRJを尻目に、E2シリーズ初の機体となるE190-E2は年内の納入開始を目指している。

 一方、MRJの納期は当初2013年だった。これが延期を重ね、現在公表されているのは2020年半ば。E190-E2はこれまでのところ、納期変更の動きはみられない。MRJはE2シリーズに対する優位性を失いつつあり、エンブラエルはMRJのつまずきにより、5年の遅れを十分取り戻せたと言えるだろう。

◆新型エンジン、MRJが最後尾

 3機種あるE2シリーズの標準座席数は、1クラス構成でE190-E2が106席、2019年前半から納入予定のE195-E2が146席、2020年に引き渡しを開始するE175-E2が88席。これに対し、2機種あるMRJは、MRJ90が92席、MRJ70が78席で、MRJ90はE175-E2と競合する。

 E190-E2と直接競合するのは、ボンバルディアの小型旅客機「Cシリーズ」2機種のうち、108-135席クラスとなるCS100だろう。機体サイズはCシリーズがやや大きいものの、MRJやE2と同じく、PW製GTFエンジンを採用している。Cシリーズは2016年に商業運航を開始しており、もっとも早くGTFエンジン採用を打ち出したMRJが、最後尾となってしまった。

 まもなく10年前となる開発発表当時、優れた空力特性や新型エンジンによる低騒音・低燃費、競合より居住性を良くした客室と、MRJはライバルを引き離す要素を数多く持ち合わせていた。

 しかし、リージョナルジェット機市場でトップシェアを握るエンブラエルは、着実にE2シリーズを仕上げてきた。客室を見ても、MRJが売りにしていた大きめの手荷物収納棚を採用するなど、豊富な運用実績に裏打ちされた信頼性に加えて、現在のニーズをキャッチアップしている。

◆「社内に緊張感ない」

 「空力設計上の差別化はかなり進んでいるので、完成機メーカーが持っていない技術を追求したい。そのひとつが複合材やアルミ、チタンなどの材料技術。合金技術や複合材技術、その組み合わせ方などを駆使して差別化したい」。2017年1月、三菱重工業(7011)の宮永俊一社長は、重工メーカーの総合力でMRJを差別化していく考えを示した。

 しかし、昨年末のボーイングとの提携交渉、今月22日に発表したE190-E2の計画を上回る燃費性能と、リージョナルジェット機の雄は熾烈に追い上げる。

 そして、三菱重工の中堅幹部からは、現状を危ぶむ声が聞かれる。「ボーイングとエンブラエルが提携するとなれば一大事なのに、社内に緊張感がない」(中堅幹部)と、社内に漂う危機感の欠如を危惧する。

 「社外からMRJに対して厳しい指摘を受けても、どうしてわれわれが一生懸命やっているのに、応援してくれないのか、という受け取り方をしがち。現状を正しく認識できていない」(同)と不安視する。

 2月6日からシンガポール航空ショーが開催される。現時点では、MRJは新たな受注は期待できず、開発状況の説明にとどまりそうだ。

 MRJの売り文句だった燃費性能を、巨人ボーイングと組むことが半ば決まったエンブラエルが強くアピールする中、三菱重工や三菱航空機が目標に掲げるリージョナルジェット機市場の2強になることは、MRJだけで達成することはもはや困難だ。

 両社は危機感が欠如した現状を改めるとともに、今から「ポストMRJ」のビジョンをどう打ち出せるかで、完成機ビジネスのプレーヤーとして生き残れるかが決まると言っても過言ではない。そしてこの問題は、日本が国として航空産業を将来の成長産業と本気で位置づける覚悟があるのかが、試されていると言えるだろう。
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