2019年開始の楽天「第4の通信キャリア」参入はいばらの道だ by 石川温 | BUSINESS INSIDER JAPAN
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Dec. 14, 2017, 06:15 PM
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楽天が周波数を取得し、携帯電話事業への参入を検討していることが明らかになった。楽天は総務省に1.7GHz帯と3.4GHzの割り当て申請を行うという。これが認められれば2019年にサービスを開始する。

総務省としては、ドコモ、au、ソフトバンクに続く「第4のキャリア」を誕生させることで、3社による寡占状態を崩し、料金競争を促進したい考えだ。

しかし、このタイミングの楽天参入に対して、業界内には悲観的な見方が少なくない。国内市場はすでに頭打ち状態であり、新規に契約者を獲得するのは難しい状態となっている。数年前までは、3キャリア間で、キャッシュバックや実質0円による販売合戦が繰り広げられ、現金による顧客の奪い合いが頻発していた。しかし、今では総務省の意向もあって、そうした顧客獲得合戦に制限がかかっている。この状況では、楽天が新規に参入したところで、大手3社から顧客を獲得するのは困難ではないか。

日本にはそもそも「第4のキャリア」がいくつもあった

そもそも、日本市場には過去にはいくつも「第4のキャリア」が存在した。

写メールやiモードが全盛だった頃は、のちにKDDIと一緒になった「ツーカー」というブランドがあった。その後、総務省は、第4のキャリアを作ろうと、新規参入を促したときには、イー・モバイルが誕生した。

ソフトバンクも同じタイミングで新規参入で周波数を獲得し、携帯電話事業に参入しようとしたが、最終的には当時のボーダフォンを買収した。ボーダフォンが持つ設備だけでなく、顧客も一緒に買い取ることで、業界3位のポジションを確保したのだった。

その後、イー・モバイルは、打つ手がなくなり、KDDIなどにも売却提案をしたとも言われるが、結局はiPhone用に周波数帯が欲しかったソフトバンクにあっさりと買収されてしまった。

また、PHSのウィルコムも、ドコモ、KDDI、ソフトバンクに続く選択肢として、かつては400万を超える契約者数を誇っていた。しかし、経営に行き詰まり、ソフトバンクの救済を受け、会社は消滅してしまった。

つまり、過去を振り返れば、日本の市場規模は、3キャリア体制が限界であり、4キャリア目が生き残るのは至難の技と見る向きが多いのだ。

通信キャリア「楽天」には秘策がある?
楽天は2019年までに2000億円、2025年までに最大6000億円を投資し、基地局を敷設していく。しかし、この金額に対し、「キャリアを作るには少なすぎるのではないか」という意見も散見される。

実際、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクは、年間で数千億円規模の設備投資を行なっている。それに対し、楽天は7年で6000億円という規模に過ぎない。金額の単純比較としても、大手3社に歯が立たないのは間違いない。また、すぐに全国規模でネットワークを構築するのは、相当な時間がかかるとされている。


しかし、かつてイー・モバイルは、都心部は自社でネットワークを構築しつつ、地方などはNTTドコモにローミングするという荒業で乗り切ったことがある。楽天も同様の方法で、ネットワーク構築の時間稼ぎをする、ということは十分にあり得そうだ。

もうひとつ、ネットワーク構築において可能性があるのが「基地局をリースで借りる」という方法だ。

新興国などでは、ファーウェイなどの基地局ベンダーが、基地局を自社の資金で建設し、キャリアにリースで貸すという手法が取られている。新規参入するキャリアにとってみれば、初期投資に莫大な資金を必要としなくていいというメリットがある。ユーザーが増え、通信料収入が入れば、基地局ベンダーにリース料を支払っていけばいいのだ。

一方の基地局ベンダーも、この方法をキャリアに提案することで、自社の基地局を売り込むことができる。リース方式はキャリアと基地局ベンダー双方にとってメリットの大きい手法だ。この方法であれば、2025年までに6000億円でも十分にやっていけるかもしれない。