トヨタ自動車が米カリフォルニア州の環境規制への対応で、温暖化ガスの排出枠(クレジット)を大量に米テスラモーターズから購入したことが明らかになった。今後は規制が強まり、さらに経営の負担になる恐れがある。
 トヨタ自動車が2017年8月末までに米国で温暖化ガスの排出枠(クレジット)を米テスラモーターズから大量に購入したことが明らかになった。米カリフォルニア州大気資源委員会(CARB)が10月13日に公表した資料による。CARBは毎年、8月末までの1年間における自動車各社の排ガスゼロ車(ZEV)規制への対応を公表している。

 同州は自動車メーカーに、販売台数の一定割合を電気自動車(EV)などZEVとするよう義務付ける規制を導入している。基準未達のメーカーは罰金を払うか、基準をクリアしているメーカーから「ZEV排出枠(クレジット)」を購入しなければならない。

 トヨタは2017年8月末までの1年間で、3万5200クレジットと業界で最も多くのクレジットを購入した。2位は米ゼネラル・モーターズ(GM)、3位は欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)だった。
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トヨタは2年前にもクレジットを購入した。しかし、その際には購入数が少ないうえに、クレジットの一部を売却もしていた。これほど大量に購入したのは始めてだ。

 トヨタがクレジットを購入した相手はテスラである。同社は「モデルS」や「モデルX」などEVの販売が伸びており、義務量を大幅に超過した余剰枠がある。そのクレジットを販売している。同社は2017年4〜6月期にZEVのクレジット販売で1億ドル(113億円)の売り上げがあった。

トヨタは以前からZEV規制の基準をクリアできないことが懸念されていた。もともと同社が主力とするHVは、ZEVへの換算比率が低い。ZEV規制は当然のことながら、テスラのようにEVを販売するメーカーに有利な仕組みだからだ。

 そこでトヨタは米国で2016年に、プラグインハイブリッド車(PHV)の「プリウスPHV(米国名:プリウス プライム)」を発売。2015年には燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を発売した。いずれもHVよりZEVの換算比率が高く、ZEV規制対応という意味合いもあった。しかし、ZEV規制の義務量を満たすほどの販売にはならず、クレジットの確保が必要になったようだ。

ZEV規制では、要求されるZEVの販売比率が年々上昇し、メーカーは対応が難しくなっている。ただし、今後、トヨタの対応が厳しくなるのは、それだけが理由ではない。

 2018年モデルのクルマからは規制が強化され、HVをZEVに換算できなくなるからだ。この新たな規制を業界では「ZEV2.0」と呼んでいる。

 2018年モデルは2017年後半以降にマイナーチェンジしたクルマを指すのが一般的だ。メーカーによってそのタイミングが異なるが、少なくとも2018年に製造、販売されるクルマは対象になりそうだ。

 いずれにしてもトヨタは、来年の義務量を達成することは難しく、これまで以上に多くのクレジット購入が必要になりそうだ。
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