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6月以降、小売店の店頭でビール類の価格が明確に上がっている(写真は5月撮影、撮影:風間 仁一郎)
ビール好きに不遇の時代なのか

スーパーマーケットやディスカウントストア、ドラッグストアなどの店頭で特売の目玉だったビール類が6月から値上げされた。

6月から施行された「酒税法等一部改正法」では「酒類の公正な取引に関する基準」を改めた。これまで、スーパーなど小売りはメーカーや卸から受け取るリベート(販売奨励金)を原資に値下げし、時には赤字覚悟の安売りで集客の目玉にしてきたが、新基準によって、小売りは仕入れ原価に人件費や光熱費などの販管費を加えた総販売原価を下回る価格で酒類を販売できなくなった。新基準に違反すれば酒類の販売免許が取り消されるなど、これまで以上に厳しい行政処分が下される可能性がある。

1月以降、キリンビールやアサヒビールがチラシ協賛金など、基準のあいまいなリベートを見直し、実質的に減額された。

これまでビールは、「ロスリーダー」として活用されてきた。ロスリーダーとは、いわゆる客寄せパンダの商品で、赤字であっても集客商品となる。スーパーマーケットなどでは、他の商品を買ってもらえれば利益は稼げる。それを補填してきたのが、ビール各社からもたらされるリベートだった。ただ、あまりに廉価販売をされてしまうと、街の小さな酒類小売店は影響を受ける。

今回の酒税法の改正によって、ビールは1割ほど高くなってしまう見込みだ。ビールメーカーはもちろん安値販売を回避できる見込みで、株式市場はおおむねビールメーカーの株を高評価した。リベートを減らせば、利益が上昇するだろうと予想するからだ。

ところで、今回の値下げでキーとなる、リベートとは何か。

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販売奨励金とも訳されるリベートは、販売を増やしてくれる小売店へ、メーカーが払うお礼だ。

ビールの商流を簡単にいえば、ビール各社→卸→小売となる。ビール各社は卸にリベートを払い、そしてそれが、小売店へ値下げの原資として使われる。リベートはビールだけの事象ではない。ただ、酒類の販売がもっとも、公正取引委員会が不当廉売で注意する案件で多く、これまで注目を浴びてきた。

これがなかなか理解されない。その多くが「それなら最初から値引きして販売しろよ」というものだ。ただ、このリベート制度は、メーカーと小売りの双方にメリットがあった。

メーカーのメリットとしては、

・表面上の販売価格を値崩れさせることなく、協力度に応じて小売店にインセンティブを与えることができる

小売店のメリットとしては、

・返品制度を崩さずに値下げ原資を有することができる

後者は説明が必要だろう。というのも、日本では、買い取りではなく、返品が一般的だ。文字どおり、売れなかった商品を戻すことだ。これはボリュームディスカウントができない難しさがある。だから事後的に支払うほうが、メリットはある。

リベート排除の歴史

一方、このリベートこそが不当廉売の源泉になっている。だから、これまでも何度も警告を発してきた。有名なのは2012年に公正取引委員会が、三菱食品、伊藤忠食品、日本酒類販売の3社に警告したものだ。3社はイオンに赤字でビールを販売していた。3社は、ビール各社からのリベートがあり、それを含めると赤字ではなかったものの、仕入れ単価のみを見ると赤字販売をしていた。公正取引委員会は、リベートをビール収支に入れてはいけないとした。

ただ、その際には、イオンは3社の仕入れ価格を知り得たわけではないし、イオンが強制的に廉価に誘導したわけでもなかった。なにより、低価格販売を進めるイオンにしてみると、別に原材料が高騰しているわけではないのにビールの価格を上げることは、消費者に説明できないとして突っぱねた。

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