年収1000万円超でも家賃を払えない

世界金融危機以降、主要都市の不動産・賃貸価格は上がり続け、所得格差も拡大している。ボストン、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨークといった人気の都市に住める人は二極化した。高い家賃を払える富裕層か、住宅補助を受けられる節約上手な低所得者層に限られつつある。

“住宅戦争”の犠牲者となっているのが、中間所得者層だ。恵まれた職に就いており、住宅補助を受けるほど貧しくはないが、上がり続ける家賃を払えるほど豊かではない──。そんな人たちが苦境に陥っている。

大都市に住み続けられず、ある家庭は郊外へ、別の家族はより物価の安い地域へと移住を強いられた。海沿いの街や、デンヴァーやオースティンのような人気の高い都市では、彼らの多くが家賃の支払いさえ困難になってしまった。

「米国のほとんどの都市では、年収10万ドル(約1116万円)の家庭は持ち家を購入する余裕などありません」。テキサス大学の顧問弁護士で、住宅供給と中間所得者層の問題を専門とするメシェル・ディッカーソンはいう。

「白人化」するスラム街

中間所得者層の受難は、厳しい都市計画法によるところが大きい。新たな住宅の建設が制限されているからだ。

サンフランシスコは全米で最も厳しい都市計画法を持ち、ほとんどの地域で住宅価格が上昇しないよう規制している。しかし、2016年には、月額3500ドル(約38万円)という平均的な家賃のアパートを借りようとすると、初期費用はたいてい12,000ドル(約134万円)を超えた。契約月と解約月、2カ月分の家賃に加え、敷金と仲介手数料も請求されるからだ。

最終的に、もともと黒人が多くを占めていたフィルモア地区は、ほぼ完全に「白人化」してしまった。ベイヴュー・ハンターズポイント地区も同様だ。やはり最後まで黒人が多数派だったが、2016年に1LDKの平均家賃は2715ドル(約30万円)近くまで上昇。これまでの住民たちは対岸のオークランドまで押し出された。

いずれも治安が悪いとされる地区だったが、高級化が加速した。おしゃれなレストランや分譲マンションが建設され、まるで前衛的なファッション誌に出てくる街のように様変わりしている。

フォートヒルでは2016年、新しい住宅を建設し、地域に長く住んでいる住民を保護しようという流れがあった。だが、一部の大家が抵抗した。低価格の住宅が市場に流入し、所有する家の資産価値が目減りするのを恐れたのだ。

すでに持ち家のある人々は変化を拒む。その結果、既存住宅の価格が高止まりし、賃貸住宅市場へも影響が及ぶ。市場価格が上昇すれば、大家も家賃を値上げする。以前から住んでいる人々は、新しい賃料を払えなければ、立ち退かざるを得ない。

伝統的にアフリカ系アメリカ人が多かったフォートヒルも、年々、白人の割合が増えている。何十年もアパートに住んでいた黒人たちに代わり、新たな居住者となったのは大学生だ。卒業するまでの数年間の我慢と考え、高い家賃も喜んで払う。今や、小学校教師の給与でも学区内には住めない。

※一部引用
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170505-00010005-wired-int&;p=1