このコロナ禍においてリーダーシップを発揮した自治体トップとして評価を受けている。その吉村知事を独占取材。
塩田
ここまでの政府の感染防止対策をどう評価していますか。

吉村
致死率を見ても、日本は諸外国より圧倒的に少ない。国全体として、危機対策は成功していると思います。
新型コロナウイルスが環境に依拠するところにいち早く気づき、「3密」を避けるとか、
クラスター対策を徹底的にやるべきだと説いた専門家会議のやり方が感染の広がりを防いだと思っています。

クラスター潰しも、ここまで徹底的にやっている国はないと思う。とくにクラスター対策は本当に画期的な判断でした。
それをいち早く考えて戦略化した東北大学大学院の押谷仁教授のグループは、日本での感染拡大阻止に大きく寄与された。
素晴らしい戦略で、日本の感染症対策はピカイチだと僕は思っています。

塩田
安倍政権のここまでのコロナ対応をどう受け止めていますか。

吉村
こうしたほうがいいのでは、と思ったのは、専門家会議が国の方向性を決めていると国民に映っている点ですね。
専門家は確かに専門的知識を有していますが、リスクを引き受けたり、リスクマネジメントをしたり、国民に対して責任を負う人たちではありません。
政治家は知識がないので、専門家から意見や知識を吸収して最後に判断する。

それが政治の仕事ですが、総理と専門家の関係を外から見ていると、専門家会議が決めたことを、総理たちが実践しているように見えます。
国民は不安だと思うんですよ。

専門家会議では、反対の意見が出ているわけでも、フルオープンで会議をやっているわけでもない。危ないとなって、いきなりモデルが出てくる。
それに基づいて、国が動いています。安倍総理も、発信のとき、「専門家会議によれば」と乱発する。
国の方向性は専門家会議が決めているのか、という話になってしまう。

専門家の皆さんが昼夜たがわずに奮闘されていることに、僕は敬意を表しています。
でも、社会・経済を営む人の中には、誰も外に出なくなったら、明日の生活ができない人がたくさんいます。その人たちを守るのも政治の役割です。
専門家は感染症対策の立場からやっているわけで、ある意味、そこに配慮しないわけです。

ところが、専門家会議が感染症の場面だけで言っていることが国の方向性を決めている。いちばんの事例が緊急事態宣言の延長だったと思います。
そこに危機感を覚えます。知識を提供する専門家会議と、判断する政府を分けたほうがいいと僕は思う。

塩田
政府が打ち出したコロナ危機対策としての経済対策はいかがですか。

吉村
予算編成について、直接的な財政支出である「真水」の量とか、いろいろ議論はありますが、かなり大胆な予算作りをしていると思います。
最も重要なのは経済活動を戻すことで、それが最大の経済対策です。外国依存が大きかったサプライチェーンの問題もありますが、内需が激減しています。
経済を1回、全部止めると、家賃補助やいろいろな給付金など、お金を渡す仕組みだけでは限界がある。
社会を動かし、経済を回すという方針を示すのが第一です。

塩田
コロナ危機発生以降を振り返って、ここは反省点と思っている場面はありますか。

吉村
自分がやってきたことが本当に正しかったかどうかを判断するには、事後の検証が重要です。振り返ると、1点、躊躇したことがありました。
1月末ごろ、中国からどんどん人が入ってきていた。そのとき、「入国制限なんかしたら、差別じゃないか」という声もありましたが、
僕は入国制限すべきではないかと思っていました。 なのに、発信しなかった。
出入国管理は国の仕事だから、というのが自分の言い訳でしたが、関西国際空港を持っている立場、現場の知事からすれば、
今から考えると、権限はないにしても、あそこで「入国の制限を」と唱えるのも1つの方法だったのでは、と思います。

一部引用  7/22配信 取材は6/23  
https://news.yahoo.co.jp/articles/f5fdde8e324648258c296639408b78440728a179?page=6
https://news.yahoo.co.jp/articles/f5fdde8e324648258c296639408b78440728a179?page=7