ライフ2019.05.27 1 by 『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』

歴史マニアの中でも戦国時代と比肩するほどの人気を誇る「幕末」。多くの俊英たちがたくさんのエピソードを残していますが、どうやらそのすべてが「真実」だとは言えないようです。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、幕末通説の「ウソ」を解き明かした一冊を紹介しています。





偏屈BOOK案内:『最新研究でここまでわかった 幕末 通説のウソ』

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『最新研究でここまでわかった 幕末 通説のウソ』
日本史の謎検証委員会 編/彩図社


仰々しい名称の委員会だが、学術的研究組織ではなく編集制作プロダクションが実体であろう。通説のウソ・シリーズとして、幕末のほか戦国時代、日本史の3冊が出ている。いわゆるコンビニ本。低品質の用紙で220ページと厚みがある。幕末の通説49件を最新研究で検証するというスタイルで、1件あたり4ページの構成。

「西郷隆盛はおおらかで寛容だったというのはウソ」から始まって、「ええじゃないかが自然に発生したというのはウソ」まで。写真は2か所に2〜4点。まず通説、そして真相というパターン。大事な記述はゴシック体+網かけの帯。主要参考文献・ウェブサイト一覧に39件。これまでの研究で明らかになった歴史の新説を一冊にまとめたとかで、えっと驚く物件はないが、そこそこ面白い。



〈大久保利通は権力を握って私利私欲で動いたというのはウソ〉

「権力を掌握した大久保は私利私欲のために政治を行った」「盟友である西郷隆盛を見殺しにするなど血も涙もない政治家だった」などというのが「通説」だというが、そうだったかなあ。もっとも大久保については、わたしも詳しくは知らない。

さて大久保は、厳格でとっつきにくい人間ではあったが、私利私欲で動くタイプではなかった。欧米視察によって西洋文明の先進性に衝撃を受けた大久保は、このままでは欧米の植民地にされるという危機感を抱いていた。それが自身に特権を集中させ強引な改革へとつながった。大久保には近代化に向けた「30年計画」があり、予算のつきにくい公共工事に私財を投じ大借金を抱えていたという。



〈坂本龍馬の船中八策が大政奉還の基礎となったというのはウソ〉

現在、龍馬が行ったとされる数々の逸話には、疑問が呈されている。とくに「船中八策」は原本が見つかっておらず、龍馬がつくったという証拠もない。薩長同盟の仲介についても、その役割は限定的だったようだ。龍馬は薩長の裏方だった。いまや、決して幕末のヒーローではなかったというのが有力な見方になっている。
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