時に「1本」という言葉で表現される年収1000万円。サラリーマンの憧れともいえる年収であり、どの職業で何歳ならば1本に達するのかについては大きな関心が寄せられる。わかりやすい憧れの対象になるため「こうすれば1000万円稼げる」と銘打ったビジネス書も数多い。

しかし、社会人になって1年目、憧れの1000万円を超える年収を得ている上司を持ったBさんは首をかしげたという。

●ただのケチ?1000万円稼いでもランチはいつも弁当
Bさんの会社の課長職は、一般的に1000万円を超える給与をもらうことができる。しかし、直属の課長は、いつも昼は自席で黙々と弁当を食べている。年が近い先輩のように、外の店に誘ってくれることはない。夜は淡々と残業をこなし、家にまっすぐ帰宅している様子だ。

スーツもさほど高そうなものではない。高級時計もしていない。週末に金がかかる趣味をしている様子もない。「いったいこの人は何が楽しくて生きているんだろう」と思うほどだった。

●会費5000円の暑気払いを企画して大目玉
その後、Bさんは暑気払いの企画を担当した。Bさんの会社の社員はほどほどに稼ぎもある。「少しいいものを」と思い、会費5000円の店を予約し、部内のメンバーに連絡のメールを送った。

その直後、Bさんは課長に呼び出された。「お前、ちょっと考えろよ」とすごむ課長の顔は、普段仕事のフィードバックを受けるときよりも怖かったそうだ。

Bさんは「たった5000円で」と驚いたが、後でほかの先輩から課長は首都圏のブランド路線に家を建ててローンを組み、主婦と2人の子供を養っていると聞かされた。

Bさんは地方出身のため、主婦と2人の子供がいる家庭はよく目にしていた。それらの家庭の年収が1000万円以上あったとはとても思えないが、生活に困っていた風にも思えない。Bさんは、改めて東京で家庭を持つ大変さが身に染みたそうだ。

「1000万円以上稼いでも、ランチや飲みにすら行けないなんて…夢がないもんですね。僕は結婚してもずっと妻に働いてもらおうと思います」

実際に、年収1000万円を得て東京で家族を抱えると、どんな生活が待っているのか。税制上のポイントや支給される各種手当、かかる費用の目安について新井佑介税理士に聞いた。

●年収1000万円稼いでも手取りは730万円程度
当然ですが、年収1000万円でも全額がそのまま使えるわけではありません。
所得税や住民税、健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険が給料から天引きされるため、手取りとなると思ったより少なくなってしまうのが現実です。

では、年収1000万円の手取りは一体いくらになるのでしょうか。

39歳で都内在住、妻は専業主婦で小学生の子供が2人の場合、ずばり、730万円程度となります。

ここで「程度」という曖昧な表現になってしまうのは、所得税や住民税の計算においては生命保険料や住宅ローンの有無など、
社会保険料の計算においては、年収のうち賞与が占める割合や被保険者の年齢などによって、計算結果が異なってしまうためです。
正確な計算は人それぞれの個別事情を考慮しなければなりません。

●年収が400万円アップしても、実質の手取りは240万円アップ程度
それでは年収600万から1000万円に400万円アップした場合、手取りはいくら増えるのでしょうか。

手取りでも400万円アップして欲しいものですが、実際には約240万円しかアップしません。なぜこのような事が起こるのでしょう。

答えは、所得税率の差のためです。年収1000万円の所得税率は20%。対して年収600万円の所得税率は10%。この税率の差が両者の手取額の差を縮めています。

ここで、1点だけ注意してほしいことがあります。同条件のもとでは、年収が低い人よりも高い人の手取り額が少なくなることはないことです。

確かに所得税の超過累進税率のもとでは、所得が高い人ほど税率が上がるため手取りに占める税金の割合は相対的に増加しますが、手取りの逆転が起こる不公平は起こりえません。



http://news.livedoor.com/article/detail/13463713/
2017年8月12日 8時26分 弁護士ドットコム