石油から化学製品を大量生産するコンビナート。その原料をバイオマスで代替しようという「バイオコンビナート」構想が提唱されている。実現すれば、脱炭素化の切り札にもなりそうだが、一体どんな技術なのか。本当にそんなことができるのだろうか。

プラスチックを生産してCO2を削減
 神戸大学のバイオ生産工学研究室(神戸市)に、岸田文雄首相や閣僚らが続々と視察に訪れている。お目当ては、二酸化炭素(CO2)を吸収する微生物を利用して、プラスチックやたんぱく質などの素材を生み出す「バイオものづくり」と呼ばれる先端技術だ。

 「CO2を食べてプラスチックを作る微生物を、バイオ技術を使って開発しています。従来、石油から作っていたプラスチックを今後はCO2から直接作りたい」と語るのは、同研究室を率いる近藤昭彦教授(副学長)。デオキシリボ核酸(DNA)に含まれる遺伝子情報である「ゲノム」を人為的に変化させるゲノム合成技術を駆使して、CO2から有機物を生成する微生物「水素細菌」の開発に取り組んでいる。

 水素細菌が作り出したバイオプラスチックは微生物に分解され、最終的には水とCO2になるため、製造や焼却の際にCO2を発生させない。つまり、作れば作るほど大気中のCO2を吸収する。仮に水素細菌で生産できる分野の製品をすべてバイオ素材に置き換えた場合、日本の年間総排出量の6倍にあたる約70億トンの温室効果ガスを削減できるという。

バイオプラスチックは脱炭素化のカギ
 食品容器やレジ袋など日常生活に欠かせなくなったプラスチック。そのほとんどは、石油を精製する過程で得られる「ナフサ」が主原料で、製造時に温室効果ガスが発生するだけでなく、自然環境で分解されにくく、埋め立てや投棄によって深刻な環境汚染を引き起こしている。

https://mainichi.jp/articles/20220809/k00/00m/020/100000c