□立方体の内部空間に、電子を閉じこめた状態を初めて観測

 東京大学とAGCの研究グループは2022年8月、広島大学および京都大学との共同研究により、全ての頂点にフッ素原子が結合した立方体型分子「全フッ素化キュバン」の合成に成功し、その内部空間に電子が閉じこめられた状態を初めて観測したと発表した。

 全フッ素化キュバンは、電子が占有しない空の分子軌道が多面体内部に集まり、電子を受けとりやすい「LUMO(最低空軌道)」を形成する。このため、その内部空間に電子を閉じ込められることは、量子化学計算により予想されていたという。ところが実際は、8つ全ての炭素にフッ素原子が結合した多面体型分子を合成するのは、極めて難しかったという。

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全フッ素化キュバンが電子を受けとる仕組みとLUMOの分布 出所:東京大学他

 こうした中でAGCは、フッ素ガスの反応性を制御しつつ、有機化合物にフッ素原子を導入する技術「PERFECT法」を既に開発していた。今回は、PPERFECT法を用いて、7つのフッ素原子を同時にキュバンに結合させることに成功した。残り1つのフッ素原子についても化学反応によって導入することに成功した。研究グループは単結晶X線構造解析を行い、キュバンの全ての頂点にフッ素が導入されていることを確認した。

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全フッ素化キュバンの合成方法と結晶構造 出所:東京大学他

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全フッ素化キュバンに与えられた電子の分布 出所:東京大学他

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2022年08月16日 09時30分 公開
EE Times Japan
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