南アフリカの荒々しい海で、タツノオトシゴの新種が発見された。「ピグミーシーホース」と呼ばれる極小タツノオトシゴの仲間だ。

 これは意外な発見だった。これまでに知られているピグミーシーホースはすべて、アジア太平洋海域に暮らしているからだ。1種が日本で見つかっているほかは、7種すべてが東南アジアからオーストラリアにかけての「コーラル・トライアングル」と呼ばれる海域に生息している。今回見つかったピグミーシーホースは、そこからおよそ8000キロも離れた海に暮らしおり、インド洋やアフリカの近海では初めての発見となる。

「ノルウェーでカンガルーを発見したようなものです」と、この研究に参加した英国の海洋生物学者リチャード・スミス氏は語る。この新種は、Hippocampus naluと名付けられ、5月19日付けで学術誌「ZooKeys」に発表された。英語では発見地にちなみ、「アフリカン・ピグミーシーホース」や「ソドワナベイ・ピグミーシーホース」と呼ばれている。ソドワナ湾は、南アフリカとモザンビークの国境に近い人気のダイビングスポットだ。

 今回の新種は、ほかのピグミーシーホースと似ているが、背中にある一対のトゲが先端までとがっているのが特徴と、米カリフォルニア科学アカデミーとオーストラリア博物館の魚類学者で、論文を執筆したグレアム・ショート氏は言う。類似のピグミーシーホースは同じくトゲをもつが、先端がとがっていない。

「トゲの用途は不明です」とショート氏。「タツノオトシゴの仲間にはトゲをもつものが多いですが、これは性選択にかかわっている、つまりメスはトゲをもつオスを好むのかもしれません」

 今回の驚くべき発見は、私たちが海について、なかでも小さな海洋生物についてほとんど知らないこと、今後もピグミーシーホースの新種が次々と発見される可能性が高いことを示唆している。

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