新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の子どもたちの一部に、欧州や米国で「川崎病」として知られる疾患に似た症状が現れている。幼児に特有とされ、日本人医師が診断基準を確立したことで名づけられたこのの炎症性疾患。今回の症例増加によって、この種の免疫疾患がどのように作用するのかを解明するきっかけになる可能性も指摘されている。

新型コロナウイルス感染症「COVID-19」が人体に及ぼす影響のリストは長くなる一方だ。免疫システムの過剰反応であるサイトカインストーム、神経疾患、足指の腫れ。本当に複雑で、恐ろしく、それに明らかに奇妙なリストである。とはいえ、Twitter上でも指摘されている通り、「すべてのウイルスは奇妙」なのだ。

新たに明らかになりつつあるのは、COVID-19が子どもたちに与える想定外の影響である。初期の報告では、子どもたちは大人と同程度の感染リスクがあるものの、症状は概して軽い(ただし既存疾患のある乳幼児を除く)とされた。

ところがいま、欧州からニューヨーク、その他の米国東海岸の都市などで、新型コロナウイルス感染後に現れる「謎の疾患」が相次いで報告されている。持続的な発熱、発疹、眼の充血など、免疫システムの混乱の兆候を示す子どもたちが病院に運び込まれているのだ。

■「川崎病」を連想させる症状

こうした症例の多くは、まれだが治療可能な幼児特有の炎症性疾患である「川崎病」を連想させるものである。一部の患者は低血圧や腹痛などのより深刻な症状を示し、ときには集中治療が必要になった。こうしたケースには別の呼称がつけられた。小児炎症性多臓器系症候群(Pediatric Inflammatory Multisystem Sydrome)、略してPIMSだ。

こうした合併症が、どれだけ広範にみられるものなのかは明らかになっていない。最新のデータでは、ニューヨーク周辺地域でこうした免疫疾患を発症した子どもたちは100人を超え、うち3人が死亡した。フランスと英国では、いずれも5月第3週に1人の死亡が報告されている。

医学誌『ランセット』に5月13日に掲載されたイタリア北部の病院で勤務する研究者による論文で、この疾患とCOVID-19とのつながりがこれまでで最も明確に示されている。

論文によると、同地域では川崎病に似た疾患が2週間で10例報告された。この症例数は通常の30倍にあたり、さらに大多数の患者は発症当時新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染していたか、過去に感染経験があったと確認されている。

■「極めてまれな現象」

多くの国々が学校やサマーキャンプの再開の是非を検討しているいま、こうした報告の増加は、最初のパンデミックと同じくらい恐ろしいものだ。そして“第2のパンデミック”が進行しているのではないかという不安をかきたてる。米連邦議会で5月第3週に証言した国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は、COVID-19と子どもの関係についてはまだ不明点が多いとして、「慎重な姿勢」を崩さないよう議員たちに呼びかけた。

とはいえ、パニックを起こせと言ったわけではない。

「恐怖と不安が広がっているようです」と、カリフォルニア大学サンディエゴ校川崎病研究センター所長のジェーン・バーンズは言う。「というのも、わたしたちは市民に向けて、幸いこのウイルスは子どもには手出しをしないと言ってきました。それがここにきて、『実は新しい事実がわかりました』と言っているわけですから」

バーンズは「いやな展開」であると認めながらも、当初の指摘はいまも正しいと念を押している。新型コロナウイルスへの感染で重症化する子どもは、ほとんどいない。「極めてまれな現象です」と、彼女は言う。

さらに、新たに合併症の発症が判明した子どもたちにしても、極めて重症のケースでさえ大多数は治療を受けて回復している。彼女によれば、ほとんどの子どもたちにとってCOVID-19の症状は軽く、無症状であることも珍しくない(一方でこの事実は、ウイルスの拡散に子どもたちがどう関与しているかについて多くの疑問を投げかける)。


https://wired.jp/2020/05/25/whats-the-strange-ailment-affecting-kids-with-covid-19/