■漂白剤は「こん棒でハエを叩くようなもの」と専門家、アルコールがなくても大丈夫

人類は5000年近くにわたり、様々な洗浄剤を発明してきた。しかし、感染症を予防するには、せっけんと水という単純な組み合わせが最も強力な手段の1つであることはずっと変わりない。

 それなのに、昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような集団感染が発生すると、人々はあらゆる種類の化学洗浄剤を買いに走る。だがその多くは、新型コロナウイルス対策には不要または無効だ。(参考記事:「新型コロナ、ことごとくパニックに陥る理由と対策」)

 例えば、店頭から消えている手指消毒剤の中には、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を殺すのに必要な、アルコール濃度が60%以下の商品も多い(編注:60%以上は米疾病対策センター(CDC)の基準で、日本の厚生労働省は70%以上。なお、物の表面の消毒ではCDCも70%以上を推奨)。また、新型コロナウイルスの被害が甚大な国々では、防護服に身を包んだ作業員が、公共の通路やオフィスビル内に漂白剤の溶液を散布している。しかし、専門家に言わせれば、感染拡大の予防に必要かどうかは疑わしい。

 漂白剤の使用は「ハエを叩くのにこん棒を使うようなものです」と英ケンブリッジ大学のウイルス学者ジェーン・グレートレクス氏は話す。そのうえ、漂白剤は金属を腐食するし、吸い込み続ければ呼吸器系の健康問題につながる恐れもある。

「漂白剤を使う表面に汚れが多く付着していた場合、その汚れが漂白剤と反応し、消毒効果が失われてしまいます」と米ジョージア州立大学の環境衛生学者リサ・カサノバ氏は話す。同氏ら専門家は、物の表面を消毒するには、漂白剤ではなく、食器用洗剤のような低刺激性の洗剤を推奨している。

 公衆衛生の専門家がせっけんに立ち返る理由はなんだろうか。新型コロナウイルスが体外でどのように存在し、一般的な物の表面でどれくらい生存し続けるかについて、これまでの研究でわかっていることを知れば、十分に理解できるだろう。

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